先週のゴールド:反落の展開

金相場は下落しました。週初は続伸しました。中国の貿易統計で予想外の輸出入の落ち込みが示され、さらなる景気減速を示唆する結果となったことで世界の株価が下落し、リスク回避の買いが入りました。

英国のEU離脱や米政府機関の一部閉鎖への懸念も支援材料となりました。その後は反落しました。対ユーロでのドル高に伴う割高感に圧迫されました。また、中国当局が国内景気の減速を受けて、一段の景気支援策を打ち出す可能性を示唆したことで世界の主要株価が堅調に推移し、投資家のリスク回避姿勢が後退したことも売りを誘いました。

12月の米卸売物価指数(PPI)が前月比0.2%低下、コア指数が0.1%低下し、インフレ関連指標が低い水準にとどまったことで、FRBによる利上げペースが減速するとの観測が強まったことは、金利を生まない資産である金にはポジティブ材料でした。その後は上昇し、株高や金利上昇、ユーロドルの下落の中、高値圏を維持しました。

米政府機関の一部閉鎖が続いていることや、英国のEU離脱に向けた情勢が混沌としていることなども、安全資産としての金買いを後押ししました。また、FRB高官らが最近相次いで追加利上げに慎重な姿勢を示していることも、金利を生まない資産である金に追い風となりました。

週末に掛けては反落しました。対ユーロでドルが強含んだことに伴う割高感が圧迫しました。週末には一時9日以来の安値となる1280.85ドルを付ける場面もありました。週間ベースでも5週ぶりの下落となりました。米中貿易戦争が収拾するとの期待が広がる中、投資家のリスク選好度が高まり、株価やドルが上昇したことが背景にあると考えられます。

また、節目の1,300ドルを超えられなかったことで、週末を前に利益確定売りが出たことも、上値を抑えたといえます。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は11日の797.71トンから18日には809.76トンに増加しました。米国株が反発基調を強める中でも保有高の増加が確認されており、金を保有しておきたいと考える投資家が増えていることがうかがえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは、米政府機関の一部閉鎖の影響により発表されていません。CFTCは、政府機関閉鎖が解除され次第、公表を再開する方針を示しています。

円建て金相場は続伸しました。ドル建て金相場は下落しましたが、ドル円相場が円安で推移したことで週間ベースでは上昇しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値圏での下値固めが続く

金相場は堅調な推移が続くと考えます。現在の金相場は節目の1,300ドルを前に足踏み状態にあります、これは、株価が反発基調を強めていることが背景にあります。

昨年末の「クリスマス・クラッシュ」のあと、株式は売られすぎと判断した投資家が株式の買い戻しを進めています。投資家心理は先週末でようやく中立に戻したと考えられます。そのため、株式を購入する投資家が今後は増える可能性があります。その場合には、金相場の調整がしばらく続くことになりそうです。

もっとも、米国を中心とした株価の戻りは一時的なものにとどまると考えられます。世界景気が2017年12月にすでにピークアウトする中、世界の株価も昨年1月にピークを付けて下落基調に入っています。

その間、米国株が堅調だったことや、米国の経済指標が依然として堅調さを維持しているとの判断から、昨年末の株価調整を一時的なものだったと見ているようです。

しかし、長期間の景気拡大や株価上昇後には、長い期間の大幅な株価調整が起きるのが一般的です。すでにその過程に入っているとすれば、現在の株価の反発はそれほど長くは続かないと考えられます。

反発基調は最大であと2週間程度続く可能性があるとみていますが、その間に金相場は大きく調整するようなことがあれば、押し目を拾う機会になると考えます。まずは1,280ドル前後で下げ止まるかを確認したいところです。そのうえで、節目の1,300ドルを超える動きとなれば、基調が一気に上向くことになりそうです。

FRB高官らは、将来的な利上げペースの鈍化を指摘し始めています。景気拡大のピーク時の利上げ見送りは、株安のサインでもあります。実際に米金利が上がらなくなれば、これが金相場を支えることになりそうです。

一方、ロシア中央銀行が公表した統計によると、金保有量で中国を上回り、世界第5位となったもようです。欧米諸国の対ロ制裁を背景に、2018年のロシア中銀による金購入量は過去最高に達しました。

ロシア中銀はここ10年、資金の安全な逃避先で基軸通貨ドルのヘッジとみなされる金を積極的に買い入れています。2018年の金購入量は880万オンスで、過去最高だった2017年の720万オンスを上回りました。

ロシアの金保有量は2019年1月1日時点で6,790万オンスです。前年の5,910万オンスから増加し、米国、ドイツ、フランス、イタリアに次ぐ金保有国となっています。このように、ロシアなど新興国の積極的な金買いも、金相場を支えているといえます。

円建て金相場は堅調に推移すると考えます。ドル建て金相場が1,280ドル前後でサポートを形成し、ドル円が極端な円高に進まなければ、基調は維持されると考えます。4,550円までの押し目があれば、徐々に買うことを検討したいところです。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。週初は前週後半の下落の流れを受けて下げていましたが、週末にかけて戻りを試しました。ただし、チャートポイントになっている815ドルでは打たれています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、米政府機関の一部閉鎖の影響により発表されていません。CFTCは、政府機関閉鎖が解除され次第、公表を再開する方針を示しています。

これまでプラチナ相場を支えてきたパラジウムは、17日に一時1,435.50ドルまで上昇し、過去最高値を更新しました。この動きに支えられる形で、プラチナ相場も辛うじて高値を維持しているといえます。しかし、主体性があるわけではないため、パラジウムが下げるようだと、プラチナの方が下げ幅が大きくなる可能性があります。

一方、パラジウムは主要生産国がロシアですが、価格を高止まりさせるために、意図的に供給を絞っている可能性があります。しかし、プラチナは主要生産国が南アフリカであり、現時点で供給調整を行っているとの報道もなく、価格の上昇は一時的にとどまる可能性もありますので注意が必要です。

また、繰り返すように、パラジウムはガソリン車に搭載される自動車触媒の原料ですが、ディーゼル車向けがメインのプラチナについては、将来的なディーゼル車の販売シェアの低下観測もあり、買いづらい状況にあります。

一方、ドイツのメルケル首相は昨年末に、大気汚染の改善を目的とするディーゼル車走行禁止を回避するため、法改正を行うと公約しました。

メルケル首相は、「ヘッセン州の最大都市であるフランクフルトなど、有害物質である窒素酸化物(NOx)の大気中の量が規制値を若干しか上回っていない都市で、ディーゼル車の乗り入れを禁止することは不釣り合いな措置だ」との見方を示しました。

ドイツでは、ディーゼル車による排出が原因でNOxの大気中の量が規制値を超えている都市が多数ありますが、メルケル政権は世論の風当たりが強い走行禁止措置を回避したい構えです。

メルケル首相は、大気汚染が深刻な都市で車両の改修が必要となる場合について、「われわれはディーゼル車所有者の味方であり、所有者が費用負担を強いられるべきではないとの明確な立場だ」と強調し、「自動車産業が信頼を大きく損ねてきたため、責任を負う必要があると考える」としています。今後の動向に注目したいところです。

とはいえ、大きな流れとしては、プラチナを原材料とする自動車触媒を使用するディーゼル車の販売台数が今後伸びる可能性はかなり低いといえます。そのため、よほどの政治的なサポートがない限り、現在のディーゼル車離れの流れを止めることは難しいでしょう。

そのため、金相場やパラジウム相場の動向に注意しながらも、基本的にはプラチナそのものの材料や相場展開を注視すべきと考えます。

今後は815ドルを超えられるかに注目します。超えることができれば、地合いは好転するでしょう。一方で節目の800ドルを下回ると、下押し圧力が強まりそうです。その場合には780ドルまでの調整が視野に入るでしょう。ここで下げ止まるかを確認することになりそうです。

円建てプラチナ相場は小幅続落しました。節目の3,000円を割り込みましたが、週末にこれを回復しています。したがって、まずは3,000円を維持できるかを確認し、そのうえで買いを検討したいところです。逆に2,900円までの下げになった場合には、まずは下げ止まりを確認したいところです。いまは無理に押し目買いを進めるよりも、基調が上向いたところで買いを検討する方が安全と考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:続落ノートパソコン展開

シルバーは続落しました。金相場の下落などもあり、これまで維持してきた15ドル台半ばの水準からやや下放れる展開となりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表する12月28日、1月4日発表予定のCOMEX銀先物市場での大口投機筋のポジションは、米政府機関の一部閉鎖の影響により発表されていません。CFTCは、政府機関閉鎖が解除され次第、公表を再開する方針を示しています。

銀相場は金相場の下落につれる展開になっています。依然として主体性がない動きといえます。これまで15.75ドルの高値水準を維持してきましたが、これを大きく上放れることができなかったため、手仕舞い売りが出始めているといえます。

株価の上昇基調は続いていることから、工業用需要がメインの銀市場も堅調に推移しやすい地合いではありますが、それでも上値が重くなっています。それだけ、銀市場そのものの強さに欠ける状況にあるということでしょう。そのため、まずは下値が確認できるかを確認することになります。

チャート上では14.80ドル前後に重要なサポートがあります。まずはこれを維持できるかを確認したいところです。このあたりまで下げると、売られすぎ感が強まりそうです。その後に反発できるようであれば、再び反転の可能性も出てくるでしょう。そのうえで、15.45ドルを超えてくれば、再び上昇基調に戻ることになります。逆に14.80ドルを割り込むようだと、基調は完全に下向きになりますので要注意といえます。

円建て銀相場は小幅続落となりました。先週同様に、節目の57円を超えられずに徐々に水準を切り下げています。まずは56円でサポートされるかを確認したいところです。そのうえで、再び57円を回復できれば、その時点で買いを検討したいところです。いまは押し目買いを避け、上昇基調に入ったところで買う方が安全性は高いと考えられます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成