株式の買いシグナルがでた

2019年の米国株は乱高下で始まりました。ボラティリティが高い状態が続くことは、すでに解説したとおりですが、それにしてもいまだに落ち着きのない動きが続いています。2019年はこのような動きと付き合っていかなければなりません。相応の覚悟をもって市場に対峙したいところです。

昨年末の大幅下落で、投資家心理はかなり冷え込んでいるようです。しかし、それが投資のチャンスととらえる向きもあります。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)によると、リスク選好度を測る「ブル・ベア指標」が1.8と、「きわめて弱気」と判断できる水準まで落ち込みました。この水準は、株式の「買いシグナル」と判断されるとのことです。

このような買いシグナルが発生したのは、英国のEU離脱に関する国民投票が世界の市場を揺るがした2016年6月以来ということです。当時を振り返ると、投票結果が想定外の「ブレグジット」となり、株価は急落し、投資家心理は悪化しました。しかし、そこが景気や株価の底となり、その後株価は大きく戻しました。

BAMLは、世界の株式市場はこの「買いシグナル」発生後に上昇する傾向があるとしています。2000年以降に15回のシグナルが発生しており、その後の3ヶ月間の市場の上昇率は6.1%ということです。

今回の買いシグナルを理由に、S&P500や中国株、ドイツ株、欧米高利回り債、新興国通貨などを買い推奨としたようです。さらに、S&P500は2,650ポイントまで上昇すると予想しています。

一方で売りを推奨する資産として、米国債、円、ディフェンシブ銘柄のヘルスケア・公益事業株を挙げています。今後は株価、金利、ドルが上昇し、リスクオンの状態になるとみているわけです。

確かに投資家心理の面では、そのような判断ができるのでしょう。しかし、今の株価調整はあくまで「バリュエーション調整」ですので、心理とは関係がないように思われます。心理面は短期的に市場を押し戻すかもしれませんが、バリュエーションは価値の問題ですので、心理面とは関係がありません。あるべき価値に調整されるまで、本格的な反発は難しいように思います。

十分に割安になるまで冷静に投資機会を待つのが賢明

また、先週末に米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、「インフレが落ち着いている状況では、利上げ判断は忍耐強くなる」とし、引き上げペースを見直す可能性を示したことや、利上げに不満を持つトランプ大統領に辞任を迫られても、「応じる考えはない」と明言したことも市場に安心感を与えているようです。

利上げペースの後退は、景気拡大の最終局面ではむしろ悪材料ですが、市場はこれを安心感ととらえたようです。昨年12月の米雇用統計では、賃金が前年同月比3.2%の上昇となりましたが、いまはFBRも認めるように、賃金上昇はインフレ率の上昇にはつながりにくくなっています。

また、原油価格の下落もあり、今後はインフレ率が上昇しづらくなります。FRBが利上げを継続する理由は徐々になくなっていくでしょう。そうなると、FRBの利上げ見送りが株式市場の買い材料になるとの解釈が強まりそうです。

しかし、今回の株価調整と同じパターンのハイテクバブルの崩壊の際に、FRBは利上げ停止から利下げに転じましたが、株価の調整は続きました。いったん株価調整が始まれば、利上げ停止や利下げでは株価の調整は止まらないわけです。

【図表】米国のハイテクバブル崩壊後の推移
出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成

最終的には十分に割安になるバリュエーション調整進むまで、株価が下げるのが過去の例からも明白です。バリュエーション調整はまだ4合目位です。短期トレードは別ですが、長期投資の場合には、今のリバウンドには慌ててついていくのではなく、冷静に投資機会を待つのが賢明と考えています。