先週のゴールド:大幅続伸

金相場は上昇基調が継続し、高値を更新しました。世界経済の減速懸念を背景とした株安などを背景に、安全資産としての買いが入り、1月4日には2018年6月以来の高値となる1,298.42ドルまで上昇し、節目の1,300ドルをうかがう展開となりました。

投資需要が戻り始めており、金相場は長期的な回復基調に入っています。ただし、週末4日の市場では下落しました。昨年12月の米雇用統計が強い内容だったことを受けて、景気の鈍化懸念が幾分和らいだことから、利益確定売りが出ました。それでも週間ベースは0.2%高となり、3週続伸となりました。

2018年12月の米雇用統計で、非農業部門の就業者数は10ヶ月ぶりの大幅な伸びを記録したことで、米国株が急伸し、ドルが買われたことで、ドル建てで取引される金の割高感が意識されました。株価の上昇の背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、「金融政策の方向性が一段と不透明となった」とし、「モメンタムは力強いが、FRBは市場が織り込みつつある下向きリスクに敏感である」との見解を示し、米景気減速を背景とした金融市場に漂う不安感の沈静化に動いたことがあります。

これを受けて、この日のダウ平均株価は700ドルを超える大幅高となり、安全資産である金に売りが出やすくなりました。世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は1月4日に798.25トンに増加しました。米国株がピークを付けた直後の昨年10月5日には730.17トンにまで減少しましたが、その後は株安・金利低下を背景に増加傾向に入りました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは、最新のデータが発表されていません。昨年12月18日時点では7万5960枚の買い越しとなっており、3週連続で買い越し幅が拡大していました。最新のデータで投機筋の動向を確認したいところです。

円建て金相場は反落しました。ドル建て金相場は上昇しましたが、ドル円相場が大幅な円高となったことが下落につながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:上昇基調は継続

金相場は上昇基調が続くと考えます。4日の市場では、米国株が大きく戻しましたが、年初からの株価の乱高下は、現在の市場の不安定さを示しています。景気拡大の最終局面では、このような価格変動が大きくなり、いわゆるボラティリティが高まりやすい傾向があります。

この傾向は当面の間続くと考えられ、投資家心理を不安定なものにさせると考えられます。また、投資家はリスク資産である株式から、安全資産である債券に資金をシフトする動きを加速させ、投資家のリスク回避姿勢がかなり鮮明になってきています。このため、米金利は低下傾向が顕著になっています。

4日の市場では、金利は急伸していますが、基本的には昨年10月以降の株価下落局以降、低下傾向に入っています。これまで金利上昇が金相場の重石になっていましたが、上値を抑えていた材料が消えつつあることは、金相場にはきわめてポジティブな材料といえます。

パウエルFRB議長もようやく、米景気の不安定さを認識していることを表明するなど、将来的な利上げペースの大幅な鈍化はほぼ確定的といえます。株価や景気動向、インフレ指標次第では2019年は利上げが見送られる可能性もあると考えますが、その場合には金相場はポジティブな反応を見せることになると考えられます。短期的にはこれまでの上昇ペースがいったん緩む可能性もありますが、引き続き高値をうかがう展開が続くと考えます。

節目の1,300ドルを超えると、1,350ドル、さらに昨年1月の高値1,366ドルを目指して水準を切り上げることが想定されます。1,366ドルを超えると目立った節目がないことから、年内にも1,500ドルから1,550ドル近辺まで上昇する可能性もあると考えます。また、米中貿易戦争や英国のEU離脱、イタリア財政不安など、国際政治情勢の不安感も金相場を押し上げると考えられます。

円建て金相場は引き続き為替相場がポイントになるでしょう。ドル建て金相場の堅調さの一方で、金融市場の不安感から安全資産である円が買われやすくなっています。そのため、円建て金相場の上値が重くなりやすくなっています。とはいえ、ドル建て金相場が堅調に推移すれば、円建て金相場の下値も堅くなると考えられます。そのため、4,550円から4,500円までの押し目があれば、ゆっくりと買うことを検討したいところです。

プラチナ:急伸

プラチナは急伸しました。週初から週中までは780ドルから800ドルの狭いレンジでの動きが続いていましたが、週末4日に急伸し、822ドルまで値を上げました。

NYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、CFTC(米商品先物取引委員会)から公表がありませんでした。最新のデータは昨年12月18日時点で、1万1387枚の買い越しとなっており、前週からネット買い越し幅が396枚増加していました。最近までは大きな変化はなく、相場と同様に投機筋のポジション動向にも方向感がない状況が続いていました。

今回のプラチナ相場の急伸の背景には、同じ白金族系メタルであるパラジウムの急上昇があると考えられます。パラジウムは昨年8月には850ドルまで下げていましたが、その後は上昇基調が続き、4日には1,300ドルを回復し、過去最高値を更新しています。

このような上昇の背景には、ロシアからの供給不安があるとみられています。つまり、現物市場のひっ迫感が相場を押し上げていることになり、今後も高値圏を維持する可能性があります。パラジウムはガソリン車に搭載される自動車触媒の原料ですが、ディーゼル車向けがメインのプラチナについては、需給ひっ迫の声は聞かれません。そのため、今後も同じように上昇するかは不透明です。

したがって、今後は金相場の動向に加え、パラジウム相場の動向にも注意が必要といえます。ただし、パラジウムが上昇した場合でも、プラチナ相場の上昇ペースは鈍いものになりそうです。

その背景には、これまで繰り返し解説してきたように、ディーゼル車の販売が低迷することで、主要な用途である触媒向け需要が今後低迷する可能性が高いことが挙げられます。ドイツ連邦自動車局(KBA)が発表した乗用車統計によると、2018年12月の新車登録台数は前年同月比6.7%減の23万7058台となりました。2018年通年では343万5778台と、前年を0.2%下回りました。

2018年はディーゼル車乗り入れ禁止に関する議論が不安を呼び、新車全体に占めるディーゼル車の比率は前年の38.8%から32.3%に低下しました。ガソリン車は62.4%(前年は57.7%)、ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド(PHV)は3.8%(同2.5%)、電気自動車(EV)は1.0%(同0.7%)と、いずれも比率が拡大しています。

また、ドイツ自動車工業会(VDA)によると、2018年の生産台数は前年を9%下回る511万8800台にとどまりました。9月に欧州で発効した国際統一燃費試験法(WLTP)への対応遅れによる生産調整が打撃となりました。また、輸出台数も国際貿易環境の悪化を受けて9%減少し、399万500台にとどまりました。

このように、自動車市場を取り巻く環境はますます厳しさを増しています。また、ガソリン車が主流である米国でも、自動車販売は低迷しており、これが世界的な動きであることは、プラチナやパラジウムの需要面に不安感があることを示しています。

また、これらのメタルはリサイクルが効くことから、今後はリサイクル市場の拡大が新規のメタル供給の余地を狭めることも想定され、これも相場の抑制につながる可能性があります。さらに、これらのメタルは工業用需要向けであり、景気動向に左右されやすい面もあります。現在のような世界景気の鈍化懸念が、相場の重石になりやすい点も念頭に入れておく必要があります。

プラチナ相場は上昇したものの、警戒的に見ていきたいところです。まずは830ドルを超えるかを確認したいと考えます。これを超えると昨年11月の高値である877ドルを目指すことになるでしょう。

逆に超えられないと、手仕舞い売りが殺到し、急落する可能性もあります。そのため、まずは830ドルを超えるかを確認することが重要と考えます。ただし、調整した場合でも、800ドルを維持できれば上昇に転じる可能性は残ると考えます。

円建てプラチナ相場は続落しました。円高が大きく影響し、節目の3,000円超えに失敗した後は下落に転じ、直近安値を更新しました。そのため、まずは節目の2,900円をサポートできるかを確認したいところです。

そのうえで、反発できれば、ゆっくりと買いを検討したいところです。今は買い下がりを避け、反発を確認したうえで買いを検討するのが良いと考えます。そのため、3,000円を超えるような強い相場展開を確認した後の方が買いやすいといえます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:上昇基調継続

シルバーは上昇しました。週末4日には一時15.87ドルまで上昇し、昨年7月以来の高値を付けました。金相場の上昇に加え、週末には株価が反転・上昇したことで、工業用需要がメインの銀への関心が高まったものと思われます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場のポジションは発表されませんでした。最新のデータである昨年12月18日時点の大口投機家のポジションは1万9831枚の買い越しで、2週連続で買いが優勢でした。投機筋は金相場の堅調に加え、週末の相場上昇を見る限り、買いポジションを積み上げている可能性が高いと考えられます。

今回の銀相場の上昇は、明らかに金相場の上昇につられています。株式市場の乱高下や下落に対して、きわめて強い動きになっており、これまでの金相場に対する割安修正的な動きにも見えます。この数年間の金/銀レシオをみると、直近の85倍はこの10年間で最も拡大した水準でした。この修正的な動きが続けば、銀相場の堅調さが続く可能性もあります。

ただし、銀は工業用需要が多く、安全資産として買われることは基本的にはありません。そのため、今後も株価の上値が重くなれば、現在の銀相場の上昇基調は一過性のものにとどまる可能性があります。この点をよく理解したうえで、銀相場の動向を見ていくことが肝要と考えます。

目先は15.70ドルを明確に上抜けると、16.40ドル前後までの上昇が想定されます。さらにこれを超えると、17ドル台半ばまでの上昇が見込まれます。逆に15ドルを割り込むと、下げ基調に転じる可能性がありますので、注意が必要と考えます。

円建て銀相場は急伸しました。これまで重かった節目の56円を超えたことで、上昇に弾みがつきました。節目を超えたことで、56円がサポートになり、ここを固めることができれば上昇基調の継続が期待できます。ただし、ドル建て相場の動きを注視しながら、円高リスクも考慮すべきと考えます。そのうえで、56円のサポートを確認できれば、慎重に買い場を探すのが賢明と考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成