米国の住宅指標はすでにピークアウト

今回は2019年の米国株について解説したいと思います。2019年はかなり厳しい年になると見ています。

米国の住宅指標はすでにピークアウトしており、これが株価下落の可能性を示唆しています。また、米長期金利が低下しており、景気の先行き不透明感が感じられます。

一部の投資家は、すでにリスク資産である株式から安全資産である債券に資金をシフトし始めています。金利はますます低下し、これが不安心理を示す形で株価の下落につながるでしょう。

また、株式投資のイールドスプレッドも低下傾向が続いており、配当利回りも大きく低下しています。このような、客観的な指標も米国株の割高感を示しています。

また、今の米国株の時価総額は、米国の経済規模に対してきわめて高い状況です。今年9月の時価総額の水準は、2000年のハイテクバブル当時を若干上回る状況であり、歴史的高水準となっていました。また、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が開発した独自の株価収益率(いわゆるCAPEレシオ)を見ても、今年1月の水準はハイテクバブル当時以来の高水準でした。

FRBの政策に期待する投資判断はきわめてリスクが高い

このように、バリュエーション面から米国株を見ると、一定の調整が必要な状況です。「FANG(Facebook・Amazon・Netflix・Google)」「GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)」などと呼ばれた主要ハイテク株が牽引する上昇相場は、ひとまず終了したと考えるのが妥当でしょう。

今後は、調整がどの水準でいつ終わるかを見極めることになります。米国株がGDPに対して4割割高であるということは、4割の調整もあり得るといえます。そうなると、ダウ平均は16,000ドル、S&P500は1,765ポイント、ナスダック指数は4,880ポイントあたりがターゲットになります。

【図表1】「米国の株式時価総額/米GDP」の推移
出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成

このような安値になるとは現時点では非常に考えにくいところですが、2000年のハイテクバブル崩壊時には、ナスダック指数は78%下げています。4割調整は決して大きな水準とも言い切れません。とはいえ、安値まで一直線で下げていくわけではありません。上下動を繰り返し、高いボラティリティを伴って調整することになります。

市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)により利上げ停止や利下げ示唆など、株価を支えるための方策を求める声が出始めています。しかし、2割程度の下げでは、金融政策の出動は難しいでしょう。金融市場が崩壊するリスクが高まらなければ、FRBも簡単には動けません。

FRBは今後の金融市場の混乱をあらかじめ予見したうえで、政策を大きく変更することはできません。したがって、FRBの政策に期待して投資判断をすることは、きわめてリスクが高いといえます。

Buy and Holdの投資スタイルを見直すべき時期

一方で、トランプ大統領やナバロ通商製造政策局長が、FRBの利上げに対して批判的なコメントを出しています。これらがFRBの政策に直接的に影響することはありませんが、FRBが一定の理解を示す可能性はあるでしょう。

OECD景気先行指数が示すように、世界の景気はすでにピークアウトしています。過去の景気拡大の最終局面では、株式リターンのボラティリティが高くなる傾向が鮮明ですので、これから株価が底値をつけに行く過程では、高いボラティリティを伴って調整が進むことになりそうです。

このような市場環境に対処するには、トレーディングを上手く行うことが不可欠になります。ヘッジファンド業界では、「2019年はトレーダーの年になる」と見られています。つまり、これまでのように、株式を購入して保有しておけばリターンが出る時代は終わり、株価の短期的かつ激しい上下動の動きに素早く対処しなければならないと見られているわけです。

これは簡単ではありませんが、少なくとも、これまでのような「Buy and Hold」の投資スタイルを見直すべき時期にあるといえます。

戻り局面を今後数年間で見極める

米中貿易戦争やハイテク技術の覇権争いなどもあり、米国を取り巻く政治的な環境はトランプ政権に代わってから大きく変貌しています。対中強硬派が政権を占める米国のスタンスは、そう簡単には変わりません。これも株式投資の判断を難しくするでしょう。

しかし、米国経済が将来にわたって成長し続ける限り、株価もいずれ戻ります。その戻り局面にいつ入るのかを今後数年間で見極めることです。

このような状況で投資に挑むのであれば、やはり高配当株への投資が賢明でしょう。例えば、配当利回りが5%以上で、時価総額が大きく、流動性も高い銘柄を選択すると良いでしょう。また、株価収益率(PER)が相対的に低く、株主資本利益率(ROE)が相対的に高い銘柄をスクリーニングしたうえで投資対象銘柄を選別すれば、リスクはより低くなるでしょう。鉱業・石油・ガス関連やREIT、タバコ銘柄にそのような傾向が見られます。

2020年には東京五輪・パラリンピックがありますが、近年は五輪開催の前年にいろいろなショックが起きています。2016年のリオ五輪の前年にはチャイナショック、2012年のロンドン五輪の前年には欧州債務危機、2008年の北京五輪の前年にはサブプライムショック(2008年にはリーマンショック)がありました。理由はともかく、2019年は波乱の年になる可能性があります。

これまでの過去の米大統領の3年目の株式投資パフォーマンスは最も高く、非常に確実なものでした。しかし、トランプ大統領という存在はそれを変えてしまう可能性があります。過去のデータは重要ですが、いまは米国株のバリュエーション調整が入りやすい地合いにあることを再確認しておきたいところです。