先週のゴールド:反落の動き

金相場は下落しました。英国の欧州連合(EU)からの離脱への懸念から、ドルが対ポンドで上昇したことが嫌気されました。

不安定な株式市場や米利上げペースが2019年に鈍化するとの見通しを背景に、10日には一時7月11日以来の高値となる1,250.55ドルを付ける場面がありました。その後は上値が重くなり、週末にかけてほぼ一貫して下落しました。ただし、ドル安基調や来年の米利上げ見通しが引き下げられるとの見方が材料視され、下げ渋る場面もありました。

一方、13日に開催された欧州中央銀行(ECB)の定例理事会では、政策金利が据え置かれる一方、量的緩和策の年内の終了が宣言されました。ただし、最新の経済見通しで、来年の成長率と物価上昇率を下方修正したことや、成長へのリスクは下振れ方向がより大きいとの見方を示したことを受けてユーロが下落し、ドル指数が上昇したことが上値を抑えました。

週末には一時4日以来の安値となる1,232.39ドルまで下落する場面がありました。18・19日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、堅調な米経済統計を背景にドル指数が1年7ヶ月ぶりの高値まで上昇したことが売り材料視され、1,238ドルで引けました。

週間ベースでは0.8%安でした。11月の米小売売上高で消費拡大の傾向が示されたことや、米鉱工業生産指数がプラスに転じたことが好感されました。世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は12月7日の759.73トンから12月14日には763.56トンに増加しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは、11日時点で6万499枚の買い越しとなり、先週から買い越し幅が1万1498枚拡大しました。買いポジションは3,419枚減少しましたが、売りポジションが1万4917枚減少しました。戻り局面で買いポジションに対する利益確定売りが入る一方、売りポジションには損失覚悟の買い戻しが入っています。

円建て金相場は上昇し、直近高値を更新しました。ドル建て金相場の上昇が水準を押し上げました。ただし、週末にはやや下げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:底堅い展開に

金相場は底堅い展開を想定しています。市場の注目は18・19日開催のFOMCに移っています。底堅い景気を確認し、今年4回目の利上げを決めると予想されています。ただし、米中貿易摩擦の影響など先行きを警戒し、来年以降の想定引き上げ回数が下方修正される見通しです。

7~9月期の米実質GDPが前期比で年率3.5%増と高い伸びとなり、低失業率と物価安定が続く状況です。パウエル議長は「景気は非常に強固」としており、9月以来となる利上げの環境は整っていると示唆しています。

市場では政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートが年0.25%引き上げられ、2.25~2.5%になるとの予想が8割に上っています。注目は来年以降の利上げペースに移っている中、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月に2019年に3回利上げするシナリオを示しています。ただし、米中貿易摩擦や世界経済の減速などを受けて、米景気のピーク感が強まっており、FOMC後に公表される金利見通しで利上げ回数が減るとの観測が出ています。

下方修正されればドル安に傾き、これが金相場を支える可能性があります。FRBはこれまでの声明で「さらなる緩やかな引き上げ」が適切と説明し、今年は3ヶ月ごとに利上げを行ってきました。

一方で、金利が景気を過熱も冷やしもしない「中立」に近づいており、利上げのペースを緩めるため、「経済データ次第」といった表現に変更する可能性もあります。そうなれば、金利上昇ペースが大きく低下することから、金利のつかない金にとってはポジティブ材料になると思われます。

これまで重いレジスタンスとなっていた1,235ドルを超えたあと、高値を付けて下げていますが、この水準を維持しており、序章基調は維持されています。したがって、1,235ドル前後で下げ渋り、その後のFOMCの結果を受けて上昇に向かえば、相応に強い展開になると考えられます。

また、最近の米国株の下落を受けて、米長期金利が低下するなど、投資家のリスク回避姿勢が強まっていることも、金市場にはポジティブといえます。米中貿易摩擦に加え、中国通信機器のファーウェイのCFO逮捕事件など、米中関係のさらなる悪化も地政学的リスクの高まりにつながります。

さらに、英国のEU離脱交渉の難航や、ドイツの政局、イタリア財政問題、ユーロ圏の銀行不安など、欧州でも不透明要因が山積みしています。そのため、金相場は下げにくい状況が続きそうです。

ドル建て金相場は節目の1,250ドルを超えると、1,300ドルを目指す展開になるとの見方は変わりません。円建て金相場も高値圏を維持すると考えます。先週末は節目の4,600円を維持しています。これをサポートできれば、上昇トレンドが維持されることになり、再び上向きやすくなります。すでに相場自体は上向いていることから、下げても深押しはないように感じます。押し目では確実に拾うことを検討したいところです。

プラチナ:安値圏での推移

プラチナは小幅続落しました。週初は一時773ドルまで下落し、9月以来の安値を付けました。その後は下げ渋り、13日には807ドルまで値を回復する場面もありましたが、週末に反落し、787ドルで引けました。

金相場が下げ基調となる中、買い戻し主体では基調を転換するまでには至りませんでした。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、11日時点で1万991枚の買い越しとなり、前週からネット買い越し幅が3,635枚減少しました。買いポジションが2,249枚増加しましたが、売りポジションが5,884枚増えました。

一部の投機筋は割安とみて買いを入れる一方、下落基調の継続を背景に売りポジションを積み上げる投機筋もいることが確認できます。値動きを見るかぎり、徐々に下値が堅くなっているようにも見えます。ただし、実需が需要の大半を占めることから、景気や株価動向に影響を受けやすい点には注意が必要です。

また、欧州の自動車市場の低迷は引き続き懸念材料といえます。欧州自動車工業会(ACEA)が発表した11月の欧州連合(EU)と欧州自由貿易連合(EFTA)の新車登録台数(乗用車)は、前年同月比8.1%減の116万台となりました。新燃費試験法の導入が引き続き重しとなったようです。

自動車業界では、9月1日から新たな国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)が導入され、一部のメーカーが認証の終わっていないモデルの出荷を停止しました。また、WLTP導入を控えた駆け込み需要もあり、WLTP導入後の乗用車販売は毎月減少しているといいます。

欧州の自動車市場では、これまでディーゼル車が主体でしたが、すでにシェアが低下し始めています。ディーゼル車の触媒向け需要が低迷すると、その原料に使用されるプラチナ需要が低下するリスクには今後も注意が必要です。

また、ガソリン車主体の中国の自動車販売も低迷しています。11月のセダン、スポーツ用多目的車(SUV)、多目的車(MPV)の新車販売台数(小売りベース)は201万9933台と、前年同月比18.0%減少しました。マイナスは5ヶ月連続です。11月の減少幅は10月の13.2%減からさらに拡大しています。また、1~11月の販売台数は前年同期比4.0%減の15万1571台となっており、年間でマイナスになる可能性が高いとみられています。

このように、世界的に自動車市場が縮小し始めていることは、プラチナにとって決して良い材料ではありません。需給面については慎重に見ていかざるを得ないでしょう。プラチナ価格が上昇するには、需給面では生産・供給調整が必要といえます。

世界最大のプラチナ生産国である南アフリカが生産を調整するなど、供給量が減少すれば、需給面での下支えとなり、相場も底堅く推移し始める可能性はあるでしょう。そのような報道があるかにも注目しておきたいところです。

いずれにしても、プラチナ市場は今後も厳しい環境が続くものと思われます。金相場の上昇に支えられる場面はあるでしょうが、一方で工業用需要が主体であるだけに、直近安値を下回り、節目の750ドルを割り込むと、大きな下げにつながるリスクがあります。金融市場が不安定化し、世界経済にも懸念が強まっていることから、これまで以上に慎重に見ていきたいところです。

円建てプラチナ相場は反発しました。一時節目の3,000円を割り込みましたが、最終的にはこれを回復しており、上値を試す可能性があります。ただし、需給動向が弱いことから、買いは慎重に行いたいところです。3,000円まで押したところで下げ止まり、反発し始めたところを狙って買いを検討したいところです。

また、上昇に転じた場合には、あまり高値を狙わずに、3,200円までの上昇の過程で利益確定を入れるなど、機動的に対応することが必要と考えます。一方で、下げ局面での押し目買いは避け、下げた後の反発を確認してから買いを検討する方が賢明といえそうです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反落も上昇基調は維持

シルバーは反落しました。週中には大きく上昇し、14.80ドル台を回復する場面もありましたが週末に金相場の下落につれる形で下げ、14.56ドルで引けました。ただし、重要なサポート水準の14.45ドルは維持し、上昇基調は辛うじて維持されました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場での大口投機筋のポジションは11日時点で1万1256枚の買い越しとなり、前週から1万1891枚のネットの買いが入りました。これにより、4日時点の635枚の売り越しから買い越しに転じたことになります。

買いポジションが1,822枚増加した一方、売りポジションが1万69枚減少しており、投機筋が買い戻しを急いだ様子がうかがえます。金融市場がきわめて不安定な動きになっており、世界的に景気鈍化懸念も強まりつつあります。

工業用需要が多い銀にとって、現在の市場環境は決して良いとはいえません。今後、景気の鈍化傾向が強まれば、銀市場への関心が低下する可能性があります。この点には注意が必要といえます。

金相場が安全資産として買われる場合でも、銀はリスク回避的に買われる可能性は低いといえます。株価が明確に下げ基調に入った場合には、相当慎重に見ていく必要があると考えます。ただし、14.95ドルを超えると、テクニカル主導で買い戻しが誘発され、一時的に上昇に向かう可能性はあります。その場合には、早い動きになる可能性がありますが、一方で下げに転じるのも早くなるでしょう。

このような、いわゆる先物市場における投機筋の一時的なポジション需給による相場変動には注意が必要です。

円建て銀相場は続伸しました。ただし、節目の56円で上値を打たれており、目先は下げる可能性がありそうです。まずは55円でサポートされると、上昇基調は維持されると考えます。その場合に、素直に買いを検討できるでしょう。

ただし、55円を割り込むと下げ基調が強まる可能性があります。その場合には、少なくとも54円で下げ止まるのを確認し、その後の反発を確認したうえで買いを検討したいところです。下げ局面での買い下がりは今は避けるべきと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成