先週のゴールド:高値更新の動き

金相場は上昇し、7月以来の高値を付けました。週初は米国が対中追加関税の引き上げを90日間凍結で中国と合意したことを受けて、ドルが売られたことが金相場を押し上げました。

また、米長期金利の低下も買い材料視され、一時は1,241.86ドルと10月26日以来の高値を付ける場面がありました。NY連銀のウィリアムズ総裁が、「金融市場の潜在的なリスクに注意を払う」としながらも、「来年を通じて利上げ継続を予想すべき」との認識を示したことで、一時的に売られる場面もありました。

その後は再び上昇し、一時5ヶ月ぶりの高値を付けました。ドル安と米利上げペースが鈍るとの見方が相場を押し上げました。また、株価の下落も下支え要因でした。中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)のCFOがカナダで逮捕され、米当局が身柄の引き渡しを求めていることで、貿易摩擦が再燃するとの懸念が浮上したことから、安全資産として買われました。

週末にはさらに上昇し、前日に続いて一時7月13日以来の高値となる1,247.30ドルを付けました。さえない米雇用統計の内容を受けて、来年の米利上げペースが鈍るとの見方からドルが下落したことが支援材料でした。

週間ベースでは2%超の上昇で、上昇率としては3月19~23日の週以来の大きさとなりました。11月の米雇用統計では、雇用の伸びが鈍化し、賃金の伸びが予想を下回ったことから、経済活動がやや鈍っているとの見方が強まりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は11月30日の761.74トンから12月7日には759.73トンに減少しました。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは、5日がブッシュ元大統領死去に伴う「国民追悼の日」となった影響で、最新のデータ発表は10日となります。

投機筋の買い越しはきわめて小幅にとどまっており、買い余地があります。今回の上昇相場で買いポジションを積み上げている可能性が高いと考えられます。円建て金相場は上昇し、直近高値を上抜きました。円高基調でしたが、ドル建て金相場の堅調さが押し上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:上昇基調が強まる

金相場はさらに上値を試すと考えます。これまで重いレジスタンスとなっていた1,235ドルを超えてきたことから、さらに上値を試しやすい地合いになっています。

その背景には、株価が不安定なことで、投資家が債券市場に資金をシフトする中、米長期金利が低下していることが背景にあります。金には利子がつかないことから、金利低下は買い材料となります。また、米金利の低下でドルが下げていることも、金相場の押し上げにつながりやすいといえます。

金融市場では、米国債の長短金利差の拡大に注目が集まっています。過去にも金利差の縮小は景気鈍化や株価の調整につながっており、これが安全資産である金相場を押し上げる可能性があります。

また、11月の雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが15万5000人増と前月の23万7000人から鈍化し、市場予想の20万人増を下回りました。時間当たり平均賃金の伸びは前月比0.2%と前月の0.1%から拡大したものの、前年同月比3.1%と市場予想を下回りました。失業率は3.7%と、49年ぶりの低水準にとどまりましたが、市場では弱い内容ととらえられました。

これを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が予想よりも早い時期に利上げを打ち止めにするのではないかとの見方が出てきています。そのため、米10年債利回りは2.852%に低下し、米2年債利回りも2.715%に低下しています。金利がこれ以上上昇しなければ、金相場の上値を抑える材料がなくなります。

CMEグループのFedウォッチによると、短期金利先物が織り込むFRBが12月18・19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を2.25~2.50%に引き上げる確率は75%となり、前日の71%から上昇しました。

ただし、短期金利先物が織り込む来年の利上げ回数は1回となっています。FRBは9月時点で来年は3回の利上げが実施されるとの見方を示しています。この見方に修正が入ると、金利はさらに低下し、金相場の押し上げにつながる可能性があります。

これら以外にも、政治的なリスクが高まっています。ファーウェイのCFOが逮捕されたことで、米国の中国政策がきわめて厳しいものであることが確認されました。貿易交渉にも影響が出ることは必至であり、最終的にはハイテク分野に大きな問題が起きると考えられます。これまで株式市場をけん引してきたハイテク企業の業績悪化から株価の調整が顕著になれば、安全資産である金へ投資価値はますます高まることになりそうです。

また欧州でも英国の欧州連合(EU)離脱が進捗しておらず、イタリア財政問題も懸念されます。イタリアやユーロ圏の銀行株指数が安値を更新しており、欧州発の金融不安が高まる可能性があるため、要注意といえます。

12月のFOMCで、米景気に対する弱気な見方が示されれば、金融市場の不安定さはさらに強まり、金市場への関心がさらに高まることになりそうです。ドル建て金相場は節目の1,250ドルを超えると、1,300ドルをめざす展開になるものと考えています。12月から1月は実需が堅調であることも、金相場を支えることになるでしょう。

円建て金相場も直近高値を更新したことから、節目の4,600円を超えると上昇に勢いがつきそうです。円高基調が上値を抑える可能性がありますが、ドル建て金相場の堅調さがそれを上回り、高値をさらに更新すると考えられます。基調が上向きに転換していることから、徐々に買い始め、押し目では確実に拾うことを検討したいところです。

プラチナ:下落基調継続で安値更新

プラチナは大幅続落しました。先週もほぼ一貫して下落し、節目の900ドルを下回りました。金相場は堅調に推移していますが、それにつれることなく、手仕舞い売りが進んでいるものと思われます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、5日がブッシュ元大統領死去に伴う「国民追悼の日」となった影響で、最新のデータ発表は10日となります。ただし、下げ基調が続いていることから、投機筋の売りポジションはさらに積み上がっている可能性があります。プラチナ相場の下落基調の継続には、プラチナ現物市場を取り巻く環境が大きく影響していると考えられます。

同じ白金族系メタルのパラジウムは一時1,263ドルまで上昇し、金相場の水準を一時上回ったことが市場で話題となりました。主要生産国であるロシアからの供給が細っていることが原因とされていますが、一方のプラチナにはそのような材料がありません。

また、これまで解説してきたように、最大の需要先であるディーゼル車向けの触媒需要の将来的な需要減退懸念が強く意識されていることが、下落につながっていると考えられます。

ドイツ連邦自動車局(KBA)が発表した乗用車統計によると、11月の新車登録台数は27万2674台となり、前年同月比9.9%減となりました。1~11月累計では319万8720台となり、前年同期比0.4%増と前年割れにはなっていませんが、自動車産業の成長性に疑問が出ています。

また、ドイツ自動車工業会(VDA)が公表した乗用車の暫定統計によると、11月の生産台数は45万500台で、前年同月比22%減でした。国際統一燃費試験法(WLTP)への対応遅れに加え、前年同月は一部工場の棚卸し作業に伴う特殊要因で押し上げられていた反動との見方があります。ただし、輸出台数が22%減の34万4100台と不振で、世界経済の鈍化が懸念されます。1~11月累計の生産は前年同期比9%減の481万4500台、輸出は8%減の374万3300台といずれも前年割れとなっており、プラチナ市場には懸念材料といえます。

このような状況から、今後もプラチナ市場は厳しい環境が続く可能性があります。金相場の上昇に支えられる場面はあるでしょうが、今後も慎重に見ていく必要がありそうです。750ドルを割り込むと、大きな下げにつながるリスクがあると考えます。

円建てプラチナ相場も急落し、節目の3,100円を割り込み、3,000円を若干下回る水準にまで下げています。きわめて弱い動きであり、底値が確認できない状況です。まずは下げ止まりから底値形成の動きを確認し、そのうえで買いのタイミングを慎重に検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反発の動き

シルバーは反発しました。新規材料難の中、金相場の上昇につれてあげています。節目の14.50ドルを超えており、上値を試しやすい地合いになっています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場での大口投機筋のポジションは5日がブッシュ元大統領死去に伴う「国民追悼の日」となった影響で、最新のデータ発表は10日となります。投機筋は先週まで売り越しとなっており、今回の反発基調を背景に買い戻しや新規買いを行っている可能性があり、この点を確認したいところです。

銀相場は独自材料に欠けることから、引き続き金相場の動向を中心に見ていくことになりそうです。チャート上では14.50ドルを超えたことで、上げやすくなっていると考えられます。上昇基調が続けば、節目の15ドル近辺までの上昇となる可能性は十分にあると考えます。

ただし、一方で銀は工業用需要がメインであり、世界経済の鈍化懸念が上値を抑える可能性があります。株式市場も不安定であり、金が安全資産として買われ、金相場が上昇した場合で、連動性が薄れる可能性があります。また、株式市場が不安定化すれば、工業用需要がメインの銀に買いが入りにくくなることが想定されます。

金/銀レシオは85倍台と、過去を振り返ってみてもかなり高い水準にあります。それだけ金融市場が不安定であるといえます。そのため、銀相場に対してはやや慎重に見ておくのが良いかと考えます。15ドルを超えると、16ドルをめざして大きく上昇する可能性がある一方、14.50ドルを再び割り込むようだと、安値圏でのもみ合いの動きを強いられることになるでしょう。

円建て銀相場は上昇しました。ドル建て銀相場の上昇が円高基調を上回りました。ただし、節目の55円を超えておらず、基調が完全に上向いたとは言いづらい状況です。したがって、まずは55円を超えたことを確認したうえで、買いを検討したいところです。

一方、54円でサポートされれば、その時点で押し目買いを検討してもよさそうです。下値リスクは以前に比べて低下したように思われますが、株価が不安定な動きになった場合には、買いは慎重に判断したほうがよさそうです。

【図表3】シルバー  縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成