先週のゴールド:レンジでの動きが継続

金相場は小幅に下落しました。ただし、アルゼンチンで11月30日に開幕した20ヶ国・地域(G20)首脳会議(サミット) に合わせて、トランプ大統領と中国の習近平国家主席による貿易摩擦についての会談で、合意できなければリスクオフの状況がさらに鮮明になるとの見方が下値を支えました。

また、米利上げの休止観測、英国のEU離脱やイタリア財政問題などの欧州不安も下値を支えました。さらに、投機的なポジション構築が2002年以来の低水準であることも下値の堅さにつながる可能性が指摘されました。

その後は下落し、1週間ぶりの安値を付けました。米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長の発言で、FRBが利上げを続けるとの見方が強まり、ドルが上昇したことで売りを誘い、一時は15日以来の安値となる1,211.36ドルを付けました。

ただし、パウエルFRB議長が金利は中立的な水準に近づいていると示唆し、利上げペースが鈍化するとの見方がドル安につながり、これが押し上げにつながりました。FRBが公表した連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、12月の追加利上げ見通しが示唆されました。しかし、将来の利上げペースの鈍化期待でドルが下落したことが材料視され、一時22日以来の高値となる1,228.96ドルを付けました。

また、ロシアとウクライナの地政学的リスクで、投資家が金に資金を移す要因になるとの見方も押し上げにつながりました。週末30日は、G20に際して行われる米中首脳会談を控えてドル高が進行したことに圧迫されました。

また、米国株の上昇も影響しました。世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、11月23日の762.92トンから11月30日の761.74トンに減少しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは11月27日時点で1,871枚の買い越しとなり、前週からネットで7025枚の売りが出ました。

買いポジションが8,727枚減少し、売りポジションが1,702枚減少しましたが、買いと売りの両方のポジションが減少したことで取組高が減少しています。それにより、全体的にポジションが縮小する動きにあります。円建て金相場は小幅に上昇しました。ドル建て金相場は上値の重い展開でしたが、円安基調が押し上げました。

【図表1】ゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:堅調地合いから上値をうかがう展開

金相場はこれまでの高値圏を超えて、上値をうかがう展開を想定します。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで2日間の日程で開かれたG20首脳会議では、高関税で相互に対抗する米国と中国の貿易戦争が世界経済のリスクとなる中、昨年の宣言で明記した「保護主義と闘う」との文言は米国の反対で盛り込めませんでした。一方、日米欧が主張していた世界貿易機関(WTO)改革では一致しました。

2008年秋の世界金融危機に対処する目的でG20首脳会議が発足して以来、合意文書で保護主義に対抗する姿勢を示せなかったのは初めてです。これにより、国際協調体制の亀裂が鮮明になりました。反保護主義の文言削除は、米中対立が原因です。

一方、市場の最大の関心を集めていたG20首脳会議後に開催された米中首脳会談では、「貿易戦争」の打開策について、米国が来年1月1日に予定した対中追加関税の引き上げを90日間凍結する一方、中国は米産品の輸入拡大で対米貿易黒字の削減に努めることで合意しました。

貿易戦争の「一時休戦」で折り合い、交渉決裂により世界経済に打撃を及ぼす深刻な事態は当面回避されました。しかし、米国側は交渉期限の90日以内に妥結しなければ、今回猶予した追加関税の25%への引き上げに踏み切ると警告しました。根本的な問題は解決されておらず、抜本的な解決は先送りされたにすぎません。

一方、欧州に目を向けると、英国のEU離脱やイタリア財政問題など、政治的な不安も残っています。また、世界経済の後退懸念が徐々に強まる中、中国の景気悪化への懸念も強まっています。

中国政府が景気刺激策を打つとの楽観論もありますが、中国経済の拡大ペースは今後着実に低下していきます。企業債務の問題など、世界経済の混乱の火種になるとの指摘もあります。

また、ポンペオ米国務長官は、イランが中距離弾道ミサイルの発射実験を実施したとし、これを「国連安保理決議に違反している」と批判しました。その一方、サウジアラビアのムハンマド皇太子がサウジ人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件に直接関与したことを示す証拠はないと断言し「サウジはイランの脅威に対抗する上で重要だ」として、今後も関係を維持する方針を示すなど、地政学的リスクもくすぶります。

さらに、G20首脳会議に際して予定されていた米ロ首脳会談が、ロシアによるウクライナ艦船を拿捕したことで急遽中止となるなど、米ロの関係も不安定です。

また、金融政策に目を向けると、FRB高官から将来の利上げペースの鈍化を示すなど、景気や株価に配慮した発言が目立っています。市場はいまのところ、これを市場の安定につながると好感しているようですが、裏を返せばFRBが将来的な経済拡大を不安視しているといえます。

12月18・19日開催のFOMCで万が一利上げができないような金融市場の混乱が起きれば、米金利が低下する一方、安全資産として金が買われやすくなると考えます。米国債券市場では、長期金利の低下が鮮明であり、これが将来的な不安を示しているといえます。

これらの周辺材料からも、金相場は底堅い展開が続くと考えられます。1,235ドルにあるレジスタンスを超えると、投機筋の買い戻しなども巻き込む形で基調は一気に上向く可能性は十分にあり、その場合には1,300ドル前後まで急伸する可能性があります。

市場全体がリスクオフになった場合に備える意味でも、引き続き金を保有することを検討したいところです。

円建て金相場は節目の4,500円を割り込まずに下値を切り上げています。直近高値の4,575円前後を明確に上抜けると、大きく値を上げていきそうです。相場の膠着状態が解消されれば一気に上向き、4,600円を超える可能性は十分にあるため、徐々に買うことを検討したいところです。

プラチナ:急落で安値更新

プラチナは大幅続落しました。ほぼ一貫して下落し、重要なサポートとみられていた830ドル水準を割り込むと大きく下落し、節目の800ドルを割り込みました。

目立った材料がない中、これまでのサポート水準を割り込んだことで、一気に手仕舞い売りが進みました。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、11月27日には2万2815枚の買い越しとなり、前週からネットで1,030枚買い越し幅が拡大しました。

買いポジションが1,975枚増加し、売りポジションが945枚増加しました。買いと売りの両方のポジションが拡大し、取組高が2,573枚拡大しました。週末にかけて相場水準がさらに切り下がっており、投機筋の損失覚悟の売りがかなり出ている可能性があり、これが相場水準をさらに押し下げた可能性があります。

貴金属市場全体をけん引する金相場は、米金利の低下や政治的・地政学的リスクを背景に堅調さを維持していますが、経済環境などに影響を受けやすいプラチナには売りが出ています。

また、最大の需要先であるディーゼル車向けの触媒需要の将来的な需要減退懸念も意識されやすいといえます。さらに、原油価格が急落する中、世界の株価がピークアウトした可能性が高まっており、これも需要の大半が実需であるプラチナ相場では下げやすい地合いにあります。

一方、現在の金融市場環境ときわめて似ている2000年のハイテクバブルの際には、プラチナ相場は2001年3月に644ドルの高値を付けた後、同年10月には403ドルまで下落し、37%もの下げになっています。

そのため、リーマンショック後の安値水準である750ドル水準を明確に割り込むと、600ドル台にまで下落するリスクが高まるため注意が必要と考えられます。

円建てプラチナ相場も急落し、節目の3,100円まで下げました。3,200円を下回ったことで売りが優勢となっており、3,100円を明確に割り込むと厳しい下げになる可能性があります。まずは下げ止まるのを確認し、さらに反発に転じたところで買いを検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:軟調地合いが継続

シルバーは続落しました。新規材料難の中、週を通して上値の重い展開が続くなど、上値を試す動きは見られませんでした。

重要なレジスタンスの14.40ドルを明確に超えられず、上値が重いと見た市場参加者が手仕舞い売りを優先したものと思われます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場での大口投機筋のポジションは11月27日時点で1万966枚の売り越しとなり、前週からネットで238枚売り越し幅が拡大しました。買いポジションが3,833枚減少し、売りポジションが3,595枚減少しました。

この結果、取組高が2万3266枚減少しており、買い手・売り手ともにポジションの解消を進めていることがうかがえます。銀相場は14.40ドル前後に位置する重要なテクニカルポイントを維持できなかったこともあり、目先は軟調な動きになる可能性があります。また、株式市場が不安定化すれば、工業用需要がメインの銀に買いが入りにくくなることが想定されます。

金/銀レシオは86倍台をつけるなど、金融市場の不安定化を想起させる状況にあります。そのため、銀相場が直近安値の13.8ドルを割り込まずに下値を固めることができるかをまずは確認することになります。

その上で、14.40ドルを明確に上抜けることができれば、地合いの好転につながるものと考えます。

円建て銀相場は軟調でした。ドル建て銀相場が下落したことが影響しました。55円が重い状況が続く一方、54円を割り込むようだと地合いは大きく悪化する可能性があります。ドル建て銀相場の動きを注視したうえで、54円での下げ止まりを確認できれば、その時点で買いを検討したいところです。しかし、54円を割り込むと地合いは急速に悪化しそうです。そのため、新規の買いは慎重に進めたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成