懸念されるハイテク企業の中国撤退リスク

米国株は再び不安定な動きになっています。11月18日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、米国と中国の意見が対立し、首脳宣言採択を断念する異例の結果となりました。

両国の主張の開きが大きいことが浮き彫りとなり、市場では貿易摩擦が早期に解決されるとの期待が後退したことが背景にあります。また、アップルが9月に発表したiPhoneの新モデル3機種について、ここ数週間で生産の発注を減らしているとの報道がありました。それによりアップル株やサプライヤー株が急落し、他の主要ハイテク株にも売りが膨らんだことも株安につながっています。

さらに、画像処理半導体大手エヌビディアが発表した同社の第4四半期の売上高見通しが、市場予想を下回ったことも材料視されています。主要株価指数を比較すると、ハイテク株の比率が多いナスダック指数の軟調さが目立ちます。

ハイテク株は金利上昇に弱いと言われており、10月の急落は金利上昇が理由だったとの見方が多いようです。しかし、最近は米国債への資金流入が目立つ中、市場金利はむしろ低下傾向にあります。それでも株価が戻らないことを考えれば、主力ハイテク株の下落は金利動向だけが原因ではなさそうです。

今後懸念されるのは、ハイテク企業の中国撤退リスクでしょう。米国の対中政策が強硬な背景は、貿易問題だけではありません。より重視しているのは国家安全保障問題です。

その中で重視されているのがハイテク技術の漏洩問題です。これを避けるために、中国からの撤退などが進むようだと、生産コストの上昇につながり、ハイテク企業の業績が悪化する可能性があるというわけです。

消費市場としての拡大期待がある一方で、生産拠点としては受容性が低下していきそうです。金利の低下がハイテク株の支えにならず、さらに米中のハイテク戦争が追加的な圧力になるとすれば、米中首脳会談での追加関税問題に関する「手打ち」は期待しづらくなるでしょう。

主力ハイテク株価がかなり明確に下げ始めている

一方で、トランプ政権が政策運営を強硬に進めることができたのも、株高基調が続いていたからです。そのため、トランプ大統領が今の米国株の不安定な状況をいつまで放置するのかも気になります。市場では今なお、サプライズ的な演出により、株価水準の回復が図られるとの期待が高いといえます。

しかし、そうならなかった場合の反動は大きなものになるでしょう。そのため、米中首脳会談に過度に期待するのは避けた方がよさそうです。

ハイテク株はこれまで割高に買われてきた経緯があるとはいえ、投資家の期待感が高かったことも事実です。しかし、「FANG」と呼ばれるフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、アルファベットの株価がかなり明確な形で下げ始めている点は大いに懸念されます。

 

【図表1】 ナスダック総合指数と米主力ハイテク株の推移

出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成

 

過去に「ハイテクバブル」「ITバブル」などと呼ばれた2000年までのナスダック指数の上昇から下落に至る値動きと、現在のFANG銘柄の株価動向を比較すると、かなり似たような動きになっているように見えます。

ちなみに、ナスダック指数は、1985年以降で第1四半期(1月~3月)に下げたことがありません。つまり、年末にナスダック指数を買い、3月末に売却すれば、過去はすべて利益になっています。

しかし、今回はどうなるでしょうか。現在のFANGを代表する主力ハイテク株がハイテクバブル時と同じように大幅に下げると見る向きはほとんどいません。しかし、歴史的な上昇後の下落局面にあることや、これらの銘柄群が下げた場合の市場へのインパクトが大きいだけに、当面の値動きには最新の注意を払いたいところです。