米国株式市場はさらに下値を切り下げました。下落の理由については様々な解説がなされていますが、とにかく手仕舞い売りを出さざるを得ない投資家の売りが断続的に出ているようです。株価は日中に戻しても、戻り局面で売られており、戻り待ちの売りが待機していることがわかります。それだけ、売り遅れた投資家が多かったといえます。

10月30日の市場ではようやく下げ止まりましたが、このまま反発基調になるのかはまだ不透明です。今回のような下げ局面になると、市場に対する解釈が変わってきます。つまり、これまで強気材料としてきたものを、逆に理解するあるいは悪材料として理解するようになります。

データの中身が変わっていないのに、市場動向が大きく変化すると、このようなことが往々にして見られます。第3四半期の米主要企業の決算内容の解釈は、まさにその典型でしょう。アマゾン・ドット・コムとアルファベットはともに売上高の伸びが鈍化し、これが材料視されて売られています。これまでのハイテク株の上昇をけん引し、将来に対する期待も高かった両社への株価が急落したのは、そのような背景があるからだと感じます。

もっとも、これまで堅調だった米国経済にも変化の兆しが見られないわけではありません。第3四半期の実質GDP速報値は、季節調整済み年率換算で前期比3.5%増と、約4年ぶりの高い伸びとなった前期の4.2%増から減速したものの、好調な個人消費に支えられ、トランプ政権が目指す3%超を維持しました。

しかし、堅調な個人消費は株高による資産効果によって支えられてきたともいえます。米国の家計の金融資産のうち、5割以上が株式・債券です。株価が高く、金利が抑制されていれば、家計資産は膨らみます。それが消費を押し上げやすくします。設備投資の落ち込みは、企業が将来の投資に慎重になっていることを示しています。

米中貿易戦争の影響が出始めているとも解釈できます。輸出の減少も同じ理由と考えることができるでしょう。グローバル貿易が縮小し始めている可能性があり、世界景気の鈍化を示唆しているとも考えられます。住宅投資の減少も、金利上昇による影響が出始めており、すでにピークアウトしたと考えるべきでしょう。在庫投資の増加は、在庫の積み増しではなく、販売鈍化の可能性があり、景気がピークアウトした可能性も指摘できます。

このように、これまで堅調だった経済指標も中身をよく見ると、それほど楽観できるわけではないこともわかります。10月の株価急落で、クリスマス商戦を控える個人消費が影響を受ける可能性は十分にあります。無論、経済指標は株価の動きに遅れます。景気が悪化に転じるときには、株価はすでに下落に転じていることでしょう。

現時点の株価急落は、高値からの下げがおおむね10%程度にとどまっています。しかし、中期的なトレンドは崩れ始めています。いまは楽観論と悲観論が交錯している状況です。現状で将来の株価動向を見極めるのはかなり難しい状況にあることだけは確かでしょう。

まずは株価そのものの動きを見極めることが重要でしょう。そのうえで、米国債やドル、VIX、金価格の動向に注目しておきたいところです。金融危機が発生した2008年のときには、その前年の2007年の半ば以降に「債券高、ドル高、VIX高、金価格上昇」の動きが確認されました。株価も2007年10月にはピークアウトしていました。今回も似たような状況になりつつあります。株価動向に加え、資金フローが反映されるこれらの市場の動向にもぜひ注目しておきたいところです。

 

【図表1】 2008年の金融危機の際の主要市場の推移①

出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成

 

【図表2】 2008年の金融危機の際の主要市場の推移②

出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成