先週のゴールド:7月半ば以来の高値に

金相場は上昇しました。週初は下げました。ドルの上昇が売りにつながりましたが、その後は徐々に下値を切り上げる動きとなりました。ドル安に加え、世界の株価の下落が押し上げました。政治や経済の不透明感が強まったことも金の魅力を高め、7月半ば以来の高値となる1,239.68ドルをつけました。

米国株が低調な企業決算、イタリア財政や世界の経済成長への懸念で下げたことで、投資家の安全資産としての金買いが進みやすい地合いとなりました。ユーロ/ドル相場が下落する中でも堅調さを維持し、投資家の買い意欲が強いことが示されました。その後も上昇し、週末には一時3ヶ月超ぶりの高値を付けました。

世界の株価が大幅安となり、米国株が不安定な動きを続ける中、投資家の安全資産としての買いがさらに進み、7月半ば以来の高値となる1,243.32ドルを付けました。週間ベースでは4週続伸となり、1月以来の長さとなっています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、10月19日の745.82トンから10月26日には749.64トンに増加しました。地政学的リスクや株安を背景に、投資家の安全資産としての買いが引き続き入っています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは10月23日時点で2万9388枚の買い越しとなり、ネットで1万1721枚の買いが入りました。これで2週連続の買い越しとなっています。

買いポジションが3,378枚増加し、売りポジションが8,343枚減少しました。金相場が堅調に推移し、徐々に下値を切り上げる動きになっており、これまで売り込んできた投機筋の買い戻しが進む一方、新規の買いも入り始めています。円建て金相場は小幅上昇しました。為替相場が円高に転じたことは押し下げ要因となりましたが、ドル建て金相場が堅調に推移したことが下値を支えました。

縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:投資家の一時的な資金の避難場所に

金相場は堅調地合いが続くと考えます。現在の金相場は徐々に下値を切り上げる底堅い展開にあります。この2週間で金市場の地合いは明らかに変化しています。

その背景にあるのが米国を中心とした世界の株価の下落です。これまで順調に値を上げてきた米国株がきわめて大きな下げに見舞われており、基調の変化が感じられる動きになっています。この状況に対し、投資家は保有していた株式を売却し、安全資産である金を購入し始めています。これは金ETF保有高の増加や投機筋の新規の買いポジションの増加でも確認できます。

このように、いまの金市場は投資家・投機家の一時的な資金の避難場所になっています。とはいえ、現在の金相場の状況は、あくまで不安定化する金融市場から流出する資金の退避先として金が買われた結果であり、上昇の背景として決してポジティブな内容とは言えません。

また、このような上昇は長続きしないとの指摘もあります。もっとも、投資家はリスク回避先として債券も購入しています。この結果、米国債利回りは低下しており、これも金利のつかない金にはポジティブな材料といえます。もっとも、これまで安全資産として買われてきたドルは堅調さを維持しており、これが上値を抑えやすいといえます。

とはいえ、いまの金相場は明らかに基調が上向きであり、季節性からもこの基調は当面続きそうです。株安の継続や中東情勢などの政治リスクが意識されることで、金相場は高値を更新する可能性があります。

また、これからインドでは婚礼シーズンや収穫後の収入増、宗教関係の祝祭などを背景とした実需の買いが入りやすい季節です。さらにクリスマスも控えており、宝飾品が一年で最も売れることもあり、金相場も統計的にも上昇しやすい季節に入ります。繰り返すように、金は「10月に買い、3月に売る」と投資リターンが得やすい傾向があります。これらの金市場を取り巻く環境を再認識しておきたいところです。

当面は1,240ドルを明確に超えるかに注目したいところです。この水準を超えると、節目の1,250ドルを試し、さらにこれを超えると1,300ドルまで上昇する可能性があると考えます。円建て金相場は節目の4,500円を維持しています。円高などで下押した場合でも、4,500円で下げ止まるようであれば、押し目買いを検討したいところです。

また、押し目がなく、上昇基調が続くようであれば、その流れに乗って買うことも検討したいところです。地合いが好転していることから、中長期的な上昇を想定した早めの対処が肝要と考えます。

プラチナ:買い越しの状況は維持

プラチナは小幅に続落しました。ただし、金相場が堅調に推移していることもあり、おおむね830ドルを挟んだ横ばいでの推移でした。

世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドは対ドルで軟調に推移しましたが、そのわりにドル建てプラチナ相場は堅調だったといえます。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、10月23日時点で1万1662枚の買い越しとなり、ネットで買い越し幅が1,418枚減少しました。買いポジションが1,632枚減少し、売りポジションが214枚減少しました。上値がやや重くなったことから、一部の投機筋が手仕舞う売りを出していることがうかがえます。

とはいえ、買い越しの状況は維持されています。現在のプラチナ相場はレンジでの推移になっています。800ドルが堅いサポートとなる一方、上値は850ドルで打たれており、かなり明確なレンジ相場になっています。したがって、このレンジを抜け出たときには、動きが大きくなる可能性があります。

繰り返すように、プラチナの需給面での背景を考慮すれば、決して強気にはなりづらい面があります。プラチナ需要の大半を占めるディーゼル車向けの触媒需要は、欧州での自動車販売の減少懸念を背景に、今後は伸びが鈍化するとの見方が大勢です。

最近は需給の引き締まり観測で同じ白金族系のパラジウムが上昇し、過去最高値を更新していますが、プラチナ相場はそれに追随する動きを見せていません。需要先が異なることもありで、市場参加者は両者の値動きを冷静に見極めているといえます。このように、プラチナ市場を取り巻く需給環境は決して芳しくありません。とはいえ、現在の水準は歴史的に見てもかなり安い水準です。

金相場やパラジウム相場が堅調に推移すれば、プラチナ相場にも相応のポジティブな影響があるものと思われます。そのため、800ドルと850ドルのレンジの上限を上抜けることができるかを注視したいと考えます。850ドルを超えると、900ドル前後まで上昇する可能性は十分にあると考えます。当面は上目線で市場動向を見極めていきたいところです。

円建てプラチナ相場は下落しました。ドル建てプラチナ相場の下落に加え、ドル/円相場が円高で推移したことが下落につながりました。3,200円が重くなる一方、3,100円では下げ渋っています。このレンジを抜けた方に動きそうです。

まずは3,100円のサポートを維持できるかを確認したいところです。サポートが確認され、反転の動きが見られたところで徐々に買いを検討したいところです。また、3,200円を超えた場合には、直近高値を更新することになるため、上昇に勢いがつく可能性があります。その場合には、その流れについていく形で買いを検討したいところです。

縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:ほぼ横ばいでの推移が続く

シルバーは小幅続伸しました。週中に掛けて下落する場面がありましたが、金相場の堅調さを受けて週末には小幅に上昇しました。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場での大口投機筋のポジションは、10月23日で5,179枚の売り越しとなり、前週からネットの売り越し幅が9,648枚縮小しました。買いポジションが2,813枚増加し、売りポジションが6,835枚減少したことで、ネット売り越し幅が縮小しました。金が堅調に推移する中、値動きが鈍かった銀にも投機筋の新規買いや買い戻しが入り始めています。

ただし、依然としてネットでは売り越しポジションを維持しており、これが買い越しに転じるかに注目したいところです。銀相場はほぼ横ばいでの推移が続いています。9月の安値水準からは辛うじて水準を切り上げているものの、明確な方向性が出ているわけではありません。

あえて言えば、金相場の堅調さに支えられているといえます。しかし、金相場が上値を試す動きにあるものの、銀相場は相対的に上値が重いといえます。これは、投資家の銀への関心が依然として高くないことを示しています。

前週も解説したように、金価格を銀価格で割ったレシオは、過去35年の平均では65倍です。現時点では84倍で推移しており、銀相場の金相場に対する相対的な割安感が指摘できます。また、この水準は1990年代半ば以降の最高水準に相当します。したがって、平均的なレシオに回帰する可能性が高いと考えることもできます。その場合、金相場が全く変動しないとしても、銀相場は19ドル弱の水準でもよいということになります。

このように単純な比較はできないとしても、銀の金に対する相対的な割安感は顕著といってよいでしょう。したがって、14.50ドル水準を固め、さらに15.30ドルを超える動きになれば、相応の上昇基調に入るといます。その場合には、16ドル台半ばから17ドル近くまで上昇する可能性がありそうです。

円建て銀相場は下落しました。ドル建て銀相場は小幅に上昇しましたが、ドル/円が下落したことが影響しています。まずは55円を明確に超え、少なくともこの水準を固めるのを確認したいところです。ただし、為替市場でこれ以上の円高が進むよう出れば、56円が重くなり、下押し圧力が強まる可能性があるため要注意です。当面は55円を回復したことを確認したうえで買いを検討したいところです。

縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券