先週のゴールド

金相場は小幅上昇しました。週初は上昇しました。米国とサウジアラビアの緊張が高まる中、世界的な株安もあり、資金の安全な逃避先とされる金に対する弱気なポジションが一部巻き戻され、2カ月半ぶり高値を付けました。一時1,233.26ドルと、7月26日以来の高値をつけました。

イタリアの財政問題や、米中貿易問題、米サウジの関係に対する懸念など、政治要因が金相場を支えました。その後は小幅に下げました。ただし、2カ月半ぶりの高値付近で推移しました。ドルは下落したが、世界的な株価回復を受けて投資家のリスク選好意欲が高まり、相殺されました。また、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、利上げ観測が強まったことを受けて、ドルが上昇したことも弱材料となりました。

一方で、米中間選挙、サウジアラビアの問題、英国のEU離脱などの地政学的リスクが材料視され、下値も堅い状況が続きました。その後は上昇しました。世界の株安を受けてリスク回避の買いが入りました。投機筋によるショートカバーや新規の買いも下値を支えました。週末には小幅上昇しました。テクニカル要因やドル安が押し上げました。世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は10月12日の744.64トンから、15日には748.76トンに増加しました。

ただし、週末の19日には745.82トンに小幅減少しました。それでも、前週末の水準は上回りました。地政学的リスクや株安を背景に、投資家の安全資産としての買いが入っていることが確認できます。CFTC(商品米先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは10月16日時点で1万7667枚の買い越しとなり、ネットで5万5842枚の買いが入り、前週の売り越しから一転して買い越しに転じました。

買いポジションが9,454枚増加し、売りポジションが4万6388枚減少しました。相場急騰で大量にショートしていた投機筋が慌てて買い戻しを行った様子がうかがえます。円建て金相場は上昇しました。ドル建て金相場が堅調に推移したことや、ドル/円相場が円安水準を維持したことが影響しました。

【図表1】 先週のゴールド 円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド

金相場は堅調地合いが続くと考えます。現在の金相場の堅調さは、外部要因が支えています。特に政治要因が大きなウェイトを占めています。

米中貿易戦争が過熱していたときには、市場は金利上昇に目を向け、ドルを安全資産として買う動きを強め、金は安全資産として扱われることなく、むしろ売られてきました。しかし、最近のイタリア財政不安、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の不調、さらにサウジアラビアの記者の殺害など、地政学的リスクが台頭しており、これに着目する動きが徐々に見られ始めています。

これに加え、世界の株式市場が不安定になっており、投資家の資金が株式から金に向かい始めていることも、金相場を支えています。投機筋は最近の金相場の急伸し、慌ててショートポジションを買い戻し始めており、これも金相場の押し上げにつながっています。

このように、節目の1,200ドルを超えてきた金相場は、いまは1,220ドル台で高止まりしています。当面は、現在の水準を維持し、1,240ドルを超えるかに引き続き注目することになります。1,240ドルにはテクニカル上のきわめて重要なレジスタンスが位置しています。

これを上抜けると、相場展開は大きく強気に傾くと考えられます。その材料は、引き続き株安と政治リスクになるでしょう。今回の金相場の急伸は、投機筋の先物市場におけるネットポジションが売り越しから買い越しに転じるほどの上昇でした。このような動きになると、上昇に対する警戒が高まりやすくなります。

その結果、新規の売りが入りづらくなるため、これも結果的に下値を支えることになります。いずれにしても、先週解説したように、少なくとも底値は脱したと考えてよいでしょう。あとは、米金利上昇のペースや、インドの婚礼シーズンや収穫後の収入増、宗教関係の祝祭などを背景とした実需の買いが入るかに注目することになります。

これからの時期は、クリスマスも控えており、宝飾品が一年で最も売れることから、金相場も統計的に上昇しやすい傾向が顕著です。繰り返すように、金は「10月に買い、3月に売る」と収益が出やすい傾向が鮮明です。この点を再認識したうえで、顕著さを維持するかを確認したいところです。

円建て金相場は節目の4,500円を超えてきました。そのため、新規での買いを検討したいところです。そのうえで、4,500円までの押し目があれば、どの程度仕えるのかを早く身に着けることでしょう。目先は4,500円がサポートとして意識されやすいといえます。そのため、4,500円までの押し目をしっかりと買っておきたいところです。

プラチナ

プラチナは下落しました。ただし、金相場が堅調に推移していることもあり、下値はきわめて限定的でした。15日には840ドルまで上昇する場面があるなど、全般的に堅調さを維持したといえます。世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドが対ドルで上昇したことも、ドル建てプラチナ相場を支えた可能性があります。

CFTC(商品米先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、10月16日時点で1万3080枚の買い越しとなり、ネットで4,854枚の買いが入りました。買いポジションが2,192枚増加し、売りポジションが2,662枚減少したことで、ネットポジションの買い越し幅が拡大しました。

これで4週連続の買い越しとなり、買い越し幅も着実に拡大しています。したがって、これまでの投機筋の売り姿勢は止まったといってよさそうです。先週は上値の重い展開でしたが、今後は825ドルをサポートにしながら、節目の850ドルを明確に上抜けるかを見ていくことになるでしょう。

そのためには、金相場の上昇が不可欠でしょう。投機筋の新規買いと売り方の買い戻しを巻き込む形で850ドルを超えることができれば、最終的に900ドルをめざす展開になるものと思われます。

プラチナ需給を取り巻く環境は相変わらず厳しいといえます。欧州自動車工業会(ACEA)が発表した9月の欧州連合(EU)と欧州自由貿易連合(EFTA)の新車登録台数は、前年同月比23.4%減の112万台となりました。9月1日から「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)」が義務化された影響で、一部の自動車メーカーが認証の終わっていないモデルの出荷を停止したことが影響したもようです。

8月は、WLTP導入を前に値引きを通じて在庫を一掃する動きが広がり、新車登録が急増していました。一方、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、国内の旧型ディーゼル車の所有者に対して、下取りおよび新車への買い替え促進プログラムを提供し、旧ディーゼル車の廃車手続きに奨励金を支払うと発表しました。

VWは、EUにおける年代順の自動車排ガス規制である「ユーロ1」から「ユーロ4」に基づいた古い形式のエンジンを搭載しているディーゼル車について、所有者が廃車に合意すれば奨励金を提供するとしている。同国のメルケル首相が率いる連立政権は、ディーゼル車による環境汚染の軽減に取り組む計画で合意し、各自動車メーカーに対して買い替えなどを促進するよう指示していました。

また、英下院の特別委員会は、ガソリンやディーゼルなどの燃料を使う自動車の国内販売を32年までに禁止するよう求めました。ガソリンと電気を使うハイブリッド車(HV)を禁止対象に含めることも主張しました。自然環境保護のため、英政府に一段の規制強化を促しています。

英政府は今年に入って、40年までに全ての新車販売を「事実上のゼロエミッション(排気ゼロ)」とする計画をまとめています。しかし、特別委員会は政府の計画をさらに推し進め、ガソリン車などの販売禁止計画の前倒しに加え、HV車を明確に対象に含む姿勢を打ち出しました。

このように、自動車の環境問題に対する欧州の姿勢はかなり厳しいものがあり、これが自動車向けプラチナ需要の頭打ちにつながりリスクが以前に比べてさらに強まっているように思われます。

繰り返すように、これらの事実を常に念頭に入れながら、プラチナへの投資を検討すべきと考えます。金相場の変動を注視しつつ、トレンドが出たところで投資することが基本的な戦略になるものと思われます。

円建てプラチナ相場は下落しました。ドル建てプラチナ相場の下落が下押しにつながりました。現状では3,200円が重くなっており、これを上抜けるかどうかがきわめて重要です。超えるようだと、トレンドに乗る形で買いを検討したいところです。

一方で、3,100円まで調整した場合で、この水準で下げ止まるようであれば、押し目買いを検討できると考えます。これまでの軟調地合いからは脱した可能性が高いと思われ、徐々に買い姿勢を強めていきたいところです。

【図表2】 プラチナ 円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー

シルバーは上昇しました。週中に掛けて下落する場面がありましたが、金相場の堅調さを受けて週末には小幅に上昇しました。

CFTC(商品米先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場での大口投機筋のポジションは、10月16日で1万4827枚の売り越しとなり、前週からネットの売り越し幅が7,423枚縮小しました。買いポジションが68枚増加し、売りポジションが7,355枚減少したことで、ネット売り越し幅が縮小しました。

金やプラチナが大幅に買われたことと比較すると、投機筋の買い戻しの勢いはかなり弱いように思われます。また、依然として売り越しでもあることから、買い戻し余地が相当大きいといえそうです。

したがって、金やプラチナが大きく反発し、上記で取り上げたそれぞれの上値のめどを超えてくるようだと、銀相場も同様につれて大きく上昇する余地があると考えます。まずは14.50ドル水準を固め、さらに15.35ドルを超えることが、中期的なトレンド転換は不可欠と考えます。銀独自の材料があまりないことから、引き続き、金とプラチナの値動きを注視しながら、方向性を確認したいところです。

また、銀相場は金に対してかなり割安な水準にあると考えられます。現在の金/銀レシオは84倍ですが、過去35年の平均では65倍です。金相場の水準が1,220ドル台ですので、銀相場は過去平均では18ドル台半ばから後半でもよいということになります。

つまり、過去平均との比較で、銀は金に対して3割近く割安になっているといえます。以前に比べて銀相場の値動きは小さくなっていますが、このような銀相場の割安感にも注目しておきたいところです。円建て銀相場は上昇。ドル建て銀相場が小幅に上昇したことが背景にあります。

55円を明確に超え、さらに56円を超えてくると、相応の上昇になる可能性が高いと考えます。まずは55円を固めるのを確認したうえで、買いを検討したいところです。さらに、56円を超える勢いが出てくれば、その流れに追随する形で買いを検討したいところです。

【図表3】 シルバー 円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成