ダウ平均株価が過去最高値を更新しました。これまでは米中貿易戦争の影響で、中国関連株と呼ばれるボーイングやキャタピラーなどが売られてきました。しかし、この話題が徐々に沈静化するにつれて、市場は冷静さを取り戻し、9月中旬に入るとこれらの銘柄に買いが戻ってきているようです。確かに関税問題は企業に一定の負担を強いることになりますが、その影響は限定的であることを市場が理解し始めたともいえそうです。こうなると、これまで「心理的に」抑えられてきた株価は上向きやすくなります。一方、金融政策も株価の上昇を後押ししそうです。というのも、後述するように、利上げの終着点が見えつつあるからです。これは、金利動向に敏感な株式投資家にとって、きわめて重要な指針であると考えます。

9月25・26日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を0.25%引き上げ、年2.0-2.25%とすることを全会一致で決めました。また、2015年末から続けてきた緩やかな利上げを2020年に打ち止めにするシナリオも示しました。利上げは6月以来で今年3回目。政策金利が2%台を回復するのは2008年のリーマン・ショック直後以来、約10年ぶりとなりました。FOMC声明では「米国景気が強固なペースで拡大」との判断を踏襲しました。また「さらなる緩やかな利上げは持続的な景気拡大と整合的」との見解を維持しました。ただし、「金融政策は引き続き緩和的」との表現を削除し、利上げの「終着点」が近づいていることを示唆しました。今回のFOMC参加者16人による利上げ想定(中央値)は、2018年が4回、2019年3回、2020年1回といずれも6月時点から据え置かれました。ただし、今回初めて示された2021年は0回となり、利上げが2020年に打ち止めとなる可能性が示されました。さらに、FRBが景気を過熱したり冷やしたりしないとみる金利水準(中立金利)は3.0%と、6月の2.9%から引き上げられました。見通しでは2019年末までにこの水準を超え、引き締め局面に入るシナリオが示されました。

今回のFOMC声明は予想されたほどタカ派的ではありませんでした。直前に連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事が長期的な利上げに言及していましたが、この点について今回は織り込まれませんでした。また、2021年の利上げ予想は0回となりましたが、2020年の利上げも難しいと考えています。過去の住宅着工件数などのサイクルから見ても、来年の第4四半期には株価はピークを迎える可能性が高そうです。FRBが示した中立金利である3.0%が今後大きく引き上げられなければ、あと1%の利上げで打ち止めになります。つまり、0.25%ずつの利上げを四半期ごとに4回行うことで、2019年9月での利上げ打ち止めが確認されることになります。米国株は利上げ停止からほどなく下落する傾向があります。そのため、今後1年間は、FRBのスタンスに変化がないかを常に注意しながら、株価動向を見ていくことになります。以前に比べると、景気サイクルの波は小さくなっている可能性がありますので、FRBの利上げがマイルドであれば、景気拡大の期間が想定以上に伸びる可能性もあります。過去の経験もあり、FRBの金融政策運営はかなり上手くなっています。過度な利上げによる「オーバーキル」のリスクを気にする必要はないでしょう。パウエルFRB議長は直近の講演で、「米国景気は強固」とし、「出来過ぎた話ではない」と自信を示しています。その上で、利上げが遅れてインフレが加速するリスクと、急ぎ過ぎて景気の腰折れを招くリスクに触れ、「緩やかな金利の正常化は両方のリスクに対処することを示す」としています。FRBの政策に信頼を置きつつ、株価動向を見ていきたいと考えています。

 

 

 

守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)