米国株は先週もS&P500とナスダック総合指数が過去最高値を更新しました。9月4日の市場では、アマゾン・ドット・コムの時価総額が一時1兆ドルを超えるなど、一部のハイテク株に資金が集中し始めています。 前回の本欄でも解説したように、米国を除く世界の株価指数が伸び悩む中、世界の投資マネーは米国株に流入し続けています。その一方で、債券ファンドにも資金が流入していることで、金利の上昇が抑制されており、これが株価上昇を後押ししているといえます。このような動きを読めなかったのがヘッジファンドです。米国株は過去最高値を更新していますが、ヘッジファンドの収益は全く改善していません。株式に投資するヘッジファンドの成績に連動する指数は低下傾向が続いています。この背景には、ディフェンシブな投資姿勢だったことや、弱気と強気のセクターを間違えたことがあるようです。ヘッジファンドは今年に入って、レバレッジ比率を引き下げました。しかし、市場は堅調に推移したため、相場上昇局面ではむしろ利益を得るチャンスを逃してしまいました。さらに、投資していたフェイスブックなどの一部テクノロジー株が大きく下落したことも痛手になりました。また、空売りしていた銘柄が上昇したことも、パフォーマンスの悪化につながったようです。

このように、ヘッジファンドだけでなく、他の投資家も米国株がこれほどまでに上昇するとは想像できなかったでしょう。しかし、筆者は本欄で繰り返し米国株主導の投資がベストであることを指摘し続けてきたことはご承知の通りです。ここまでは想定通りに推移してきたわけですが、さすがに米中間選挙の年は上げにくいだろうとの指摘も聞かれます。しかし、以前にも解説したように、共和党政権であるトランプ政権下の株価推移は、民主党政権のパターンにきわめて似ています。この傾向は今年も同じであり、中間選挙年でも株価は上がっています。まさに民主党政権のパターンです。非常に不思議ではありますが、政策面が評価されて株価が上昇している以上、この事実を重視すべきでしょう。

米国株の9月の傾向をみると、過去の月間騰落率はダウ平均がマイナス0.8%、S&P500がマイナス0.5%、ナスダック指数がマイナス0.5%と軟調です。また、中間選挙年はそれぞれ、マイナス1.0%、マイナス0.4%、マイナス0.8%となっています。さらに、1年間における9月のパフォーマンスは、12番目です。つまり、9月は1年の中でもっともパフォーマンスが悪い月ということです。このように考えると、高値圏にあることから、米国株は買いづらいとの評価になりそうです。しかし、大きく上昇している年もあります。9月の過去最大のパフォーマンスは、ダウ平均が2010年の7.7%上昇、S&P500が同じく2010年の8.8%で、ナスダック指数は1998年の13.0%です。例年、9月のパフォーマンスが悪いことは自明ですので、この点をあまり気にせずに、米中間選挙を前に政治的な動きが出てくるかを注視したいと考えます。トランプ政権が自ら重視する中間選挙では失策は許されません。また、トランプ政権が、株価重視のスタンスであることも、米国株には追い風といえます。一方、これから年末に向けて、出遅れた投資家の米国株への投資が膨らむ可能性があります。また、運用パフォーマンスが悪いヘッジファンドが年末までに収益を上げるため、これまで上げている銘柄に集中投資することも想定されます。その際には、ハイテク株を中心に比較的大きな資金が入ってくることになりそうです。このような動きを想定しながら、今後の米国株の動向を見ていきたいところです。

 

江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)