米国株が堅調です。S&P500とナスダック総合指数は過去最高値を更新しました。1月に高値を付けた後、株価は金利急伸を嫌気して下げました。その後も米中貿易戦争への懸念や、米国によるイランへの経済制裁、さらにトルコの政治不安や新興国通貨の下落など、市場には不透明要因が渦巻く状況となりました。米国株はなかなか回復しませんでしたが、市場参加者がトランプ政権の政策への懸念を強めていたことが背景にあったのでしょう。しかし、批判されながらも、トランプ大統領は一貫して「米国第一主義」を掲げ、経済面で米国が有利になると考える政策を矢継ぎ早に打ち出し、それを実行に移しました。その結果、米国景気は再加速し、第2四半期のGDP成長率は前期比年率で4.1%増ときわめて強い結果となりました。このように、トランプ政権の政策は、ここまでの結果を見れば、大成功と言えます。その一方で、関税問題で疲弊するとみられる中国経済は、ピークアウト感が出始めており、さらに貿易収支も縮小傾向です。また、主要経済指標も伸びが鈍化し始めており、一時期の勢いはありません。その結果、主要株価指数は下落し、年初から上昇していた人民元を安値誘導せざるを得ず、きわめて苦しい経済運営を強いられています。また、欧州も景気指標の鈍化が顕著で、株価も伸び悩んでいます。

このように、経済政策と企業業績の結果については、米国と他国の差は歴然としており、その差が株価に反映されているといえます。今年のS&P500とMSCI株価指数(米国を除く)を比較すると、3月までは両者は同じ動きにありましたが、4月以降はパフォーマンスに大きな差がみられます。これは、トランプ大統領が貿易交渉や経済制裁などに関して、きわめて強硬な態度に出始めたタイミングに合致します。特に対中政策は強硬であり、全くぶれがありません。米国経済優先の政策を完遂し、さらに結果が出ているのですから、投資家としては投資対象として米国市場を選択するのは当然の判断になります。幸い、長期金利も3%を下回る水準で推移しており、金利面からの圧力も強くありません。投資家としては、米国株にきわめて投資しやすい環境にあるといえます。その結果が、過去最高値更新であると考えられます。また、投資家は、パフォーマンスの良い市場に投資資金を移す傾向があります。これも他の市場との差を拡大させる一因になっていると考えられます。

とはいえ、トランプ大統領自身を取り巻く環境は不透明です。ロシア疑惑や弾劾リスクなどもくすぶっています。しかし、政策が上手く機能しており、経済も堅調に推移しています。最終的にはこれらの問題をクリアし、さらに中間選挙に向けてさらに力を強めていくでしょう。現在のトランプ政権の政策と結果を素直に捉えるのか、それとも批判的に捉えて米国株の上昇を見過ごすのかで、今後の投資リターンは大きく違ってくるでしょう。これまでも、トランプ政権の政策に批判的な投資家は米国株への投資を見送り、中には空売りを積み増した向きもいました。しかし、彼らの運用パフォーマンはベンチマークを下回っています。これらの事実を基に考えれば、トランプ政権の政策が従来の軌道から外れ、株価のトレンドが明確に変わるまでは、現在の値動きについていくのが賢明でしょう。そのうえで、これまでに本欄で解説した重要な複数の指標に変化が出た段階で、方針を転換すればよいと考えています。私は様々な指標から、あと一年程度、米国株高と景気拡大が続くと考えています。

江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)