米国株はハイテク企業の業績への懸念から、天井感を指摘する声が出始めています。フェイスブックは、月間アクティブユーザー数(MAU)が予想に届かなかったことや、利用者のプライバシー保護を強化するためのコスト増加などを理由に、今後数年にわたり収益が悪化するとしました。ツイッターは、平均月間アクティブユーザー数(MAU)が予想を下回ったことで、株価は1日で20%を超える暴落となりました。不審なアカウントの削除を進めており、ユーザー数が今後も減少し続ける可能性があるとしています。このような状況から、ハイテク株に関して一部の米金融機関から注意喚起的な見方が出始めています。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、「フェイスブック株の急落は相場の天井の兆し」と指摘し、いわゆる「FAANG銘柄」の売りを勧めています。モルガン・スタンレーも、高騰してきたテクノロジー株の先行きに弱気な見方を示し、「2月以来最大の調整に向かう可能性が高い」として、「バリュエーションの低い銘柄で安全性を求めるべき」としています。クレディ・スイスも「ヘッジファンドは最近のハイテク株の急落でも、まだ上昇を諦め切れていない」とし、「この愛着は良い結末を迎えない可能性がある」としています。

しかし、業績が拡大しているハイテク企業も多くあります。アマゾン・ドット・コムは純利益が前年同期比12.9倍となり、2四半期ぶりに過去最高を更新しました。利益率の高いクラウド事業の収入が49%増と高成長を続けています。また、有料のプライム会員の増加などで月額課金サービスは57%増加しました。グーグルの持ち株会社アルファベットは、売上高が前年同期比25.6%増、実質1株当たり利益も市場予想を大きく上回り、取引時間中の過去最高値を更新しました。アップルも、iPhoneの高価格モデルの販売が好調で、アプリ販売の「アップルストア」や音楽配信「アップルミュージック」、アイクラウドなどのサービス事業の増収が寄与しました。これらの企業は業態の拡大・転換を上手く図っており、これが持続的な業績拡大につながっています。ハイテク株は今後も堅調に推移するとみていますが、企業を選別するフェーズに入っているといえそうです。

一方、米国の経済指標は堅調です。2018年4-6月期の米実質GDP速報値は年率換算で前期比4.1%増となりました。減税効果を背景に個人消費が盛り上がり、2014年7-9月期の4.9%増以来の大きな伸びを記録し、景気の底堅さを改めて裏付けました。2009年7月に始まった米国景気の拡大は、戦後最長となる10年間の更新も射程内にはいってきました。さらに、株価との連動性が高い消費者信頼感指数も、7月は127.4と、前月の127.1から上昇しました。消費者信頼感指数には現況指数と期待指数がありますが、現在は現況指数が拡大する一方で期待指数が伸び悩んでおり、両者の乖離は拡大しています。過去の動きを見ると、この乖離幅が大きくなる時に米国株は大きく上昇しています。そして、乖離幅が50を超えると過熱気味になり、いずれ株価がピークアウトします。期待指数の伸び悩みは、将来の見通しにやや悲観的であること意味しますので、最終的には株価が下げに転じる兆候といえるでしょう。いまの乖離幅は64.2ですが、いわゆる「ハイテクバブル」に向かう途中の98年以来の水準です。現在の乖離幅の拡大は、米国株の一段の上昇を示唆していると考えています。この乖離幅の動きに注目しながら、米国株の動向を見ていくようにしたいところです。

 

江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)