米国株は堅調さを取り戻してきました。これまでは各国・地域の関税問題を背景に、世界経済が停滞するとの懸念から、上値の重い展開が続いていました。国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通しで、経済成長率について、2018・2019年とも3.9%で据え置いてきましたが、米中の「貿易戦争」などで「下向きリスクが一段と顕著になった」と強調しました。そのうえで、「影響が顕在化すれば、2020年までに成長見通しは0.5%程度下がる」としました。さらに、日本やユーロ圏を念頭に「一部主要国の成長ペースがピークに達したようだ」と、世界経済の拡大が曲がり角に差し掛かっている可能性に言及しました。そのうえで、米国が仕掛けた制裁関税に関して「保護主義的な措置を避け、貿易拡大を促す協調的な解決策が成長維持に不可欠だ」としました。また、「米国の利上げペースが加速すれば、新興国からの資金流出など、世界的なマネーの動きが急激に変調する恐れがある」と改めて注意を促しました。IMFは経済を取り巻く現在の環境を、かなり慎重に見ているようです。

確かに世界経済は循環的にはやや停滞気味です。これは経済協力開発機構(OECD)が発表する景気先行指数の動きからも顕著です。日本やユーロ圏の経済はすでに減速期から停滞期に入ろうとしています。しかし、米国だけはいまだに堅調で、拡大期にとどまっています。世界の多くの国や地域が景気の減速期から停滞期に移行しつつある中、米国の強さは異質にも見えるほどです。とはいえ、実際の景気指標はいまだに堅調であり、これを否定する材料は見当たりません。もっとも、このような状況の時には、株価のリターンは大きくなるものの、リスクは高くなりやすい傾向があります。つまり、株価の変動が大きくなりやすいということになります。これは、大きな上昇トレンドの最終局面で見られる傾向ともいえます。先週までの本欄で繰り返し解説しているように、米国株は景気サイクルや債券から株式の資金シフトサイクル、さらに利上げサイクルなどから、今後は1年から1年半程度の上昇基調が続く可能性がきわめて高いと考えています。しかし、その上昇は相応の変動をもって示現することになりそうです。

先週から米国の主要企業の第2四半期(4-6月)の決算発表が始まりました。軒並み堅調な内容になっています。やはり主体はハイテク株でしょう。7月16日の引け後に発表されたネットフリックスの決算は、契約者数の伸びが予想に届かなかったことから急落しましたが、すでに株価が高いことから格好の利益確定売りの材料になったということでしょう。ハイテク株中心のナスダック総合指数は過去最高値を更新しています。7月17日にはフェイスブック、グーグルの親会社アルファベット、アマゾン・ドット・コムの株価が過去最高値を記録するなど、堅調さが顕著です。ハイテク株の成長について心配は不要と考えています。また、金利上昇で金融株も堅調です。業績も回復しており、期待感があります。金利は今後も上昇しますので、さらに恩恵を受けるでしょう。エネルギー株はやや上値が重くなっています。最近の原油高が一服していることが背景にあります。もともと、エネルギー株は12月に買い、7月に売ると高いパフォーマンスを得やすいという傾向があります。エネルギー株に投資している場合には、ハイテク株への移行が良いといえそうです。いずれにしても、上記のサイクルから、今後1年から1年半は米国株、特にハイテク株に注目すべきとの見方は全く変わりません。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)