米国株式市場はいまだに不安定な動きにあります。市場は米国を発信源とする貿易摩擦を懸念しています。報じられているように、各国の報復合戦の様相を呈しています。ここ最近は激しさを増しており、トランプ米大統領が「米国は世界貿易機関(WTO)で長年にわたり不当な扱いを受けてきた」と不満を表明するなど、発言も過激になっています。このような状況を受けて、投資家心理は冷え込んでおり、株価も下落しています。しかし、この議論はいずれ収束すると考えています。現実問題として、米国は自国でアイフォンを作ることすらできません。原材料が不足しており、輸入に頼らざるを得ないのです。このような構造的な問題も貿易赤字の背景にあります。国の方針として貿易赤字の削減を目指すことは理解できますが、現実的には限界があります。また、米国では中間選挙も控えています。最終的に、米国と各国・地域との関税問題は一定のところで落ち着くと考えています。

今後は景気動向と利上げペースが重要になってきます。米国の景況感に陰りが見えそうな雰囲気がありましたが、6月のISM製造業景況指数は60.2と、5月の58.7から上昇し、節目の50を22カ月連続で上回りました。この指標は米国株との連動性が強いことから、ひとまず安心感が出たといえるでしょう。一方の利上げですが、こちらも先が見えてきました。米連邦準備制度理事会(FRB)が考える現在の中立金利は2.9%です。いまの政策金利であるFFレートは1.75%~2.00%です。中立金利が変更されなければ、あと1%の金利引き上げ余地があることになります。これまでのように、四半期ごとに0.25%ポイントずつ引き上げていくと、あと4回の利上げが可能となります。今年9月・12月、来年3月・6月ないしは9月の4回の利上げで、FFレートは中立金利に達することになります。ここで利上げが打ち止めになる可能性がありそうです。

その際、2年債利回りは現在の2.5%台から3%台に入っていることでしょう。10年債利回りが上昇した場合でも、2年債利回りの上昇ペースが速まることで、2-10年債利回りのイールドスプレッドはフラット化に向かうでしょう。そのタイミングは速ければ前述の2019年6月、遅くとも9月から2020年初めごろになりそうです。実は、このタイミングが株価のピークのタイミングを模索する上できわめて重要です。 前回の本欄でも解説しているように、ハイテク株主導の株価上昇は2019年半ばから2020年初めまで続くと考えています。そのタイミングと利上げの終了、イールドスプレッドのフラット化のタイミングが一致するところがポイントです。いま現在でもイールドスプレッドは縮小の動きにありますが、あまりよくない動きといえます。というのも、金利全体が低下している中で縮小しているからです。株価や景気が強い動きであれば、長短両方の金利が上昇する中でイールドスプレッドが縮小します。このような動きになるのが理想です。

いずれにしても、2012年から始まった米国株の17年間の長期上昇相場の前半部分である8年間の上昇は、あと1年程度でいったん終了しそうです。上記のように、金利動向からある程度の見通しが立てられるわけですが、それをより明確に示すデータがあります。次回の本欄では、上記のポイントを過去の米国債と世界株価の動きから解説することにします。これを理解していれば、株式の利益確定のタイミングを逃すリスクを軽減できることでしょう。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)