北朝鮮情勢や米国によるイラン核合意からの離脱など、世界情勢への懸念が引き続き高い状態が続いています。また、原油高を背景にインフレ懸念が高まっていることから、米長期金利が上昇しています。そのためか、米国株はなかなか上値を追うことができていません。しかし、株価形成の本質的な要因である企業業績は堅調そのものです。トムソン・ロイターの調査によると、S&P500指数採用企業の2018年第1四半期決算は、前年同期比26.0%の増益となる見通しです。また、S&P500企業の今後4四半期(2018年第2四半期-2019年第1四半期)の予想株価収益率(PER)は16.7倍となっています。一時は18倍を超えていたことを考えると、かなり低下していることになります。投資家は現金なもので、強気なときはPERが18倍でも買う一方、いまのように地政学的リスクやインフレ懸念が台頭すると、割安感があっても手を出しません。また、投資家の多くが、いまの業績がピークであり、今後は伸びないのではないかと考えていることも、買い手控えにつながっているものと思われます。しかし、のちの株価が上昇すると、「やはり割安だった」と考えを変え、慌てて買うことになり、高値つかみとなることも少なくありません。このような事態だけは避けたいものです。

投資タイミングという点では、著名投資家のウォーレン・バフェット氏の投資行動が参考になるでしょう。バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは、今年1-3月期にアップル株を7,500万株買い増していました。この時期は、米国株が急落していた時期に重なります。つまり、値下がりしたときにしっかりと仕込んでいるわけです。これまでハイテク株への投資を控えてきたバフェット氏ですが、アップル株に関してはかなり積極的に買いを入れています。バフェット氏は「アップルのビジネス内容がとても好きだ。経営陣とその考え方もとても気に入っている」としています。そのうえで、「我々はアップルの株式を購入しているわけではなく、アップルの事業5%に投資をしている」とし、さらに「今後買い増しを加速することになれば、アップルの株価が下がってくれればありがたい」としています。バフェット氏は、株式は株価が少しでも安いときに買うのが得策であることを、今回も身をもって示してくれたわけです。バフェット氏は「米国株は上昇しているものの、バブルは発生していない」としています。この心強い言葉を支えに、今後も米国株を資産運用の中心に据えておくのが賢明と考えます。

市場関係者は、どうしてもネガティブ要因に目を向けがちです。上記の材料や「米中貿易戦争」もその要因でしょう。特に最近は金利上昇への懸念がさらに強まっている印象です。米10年債利回りは一時、2011年7月以来の高水準となる3.10%を付けました。金利上昇は確かに株価の上昇を圧迫する要因になり得ます。しかし、それは景気や株価がピークに達する過程では当然のことですので、今の時点で懸念するには及びません。過去の金利上昇局面では、米国株は6割近い上昇を見せています。今回もそのような動きになるとすれば、ダウ平均は3万ドルの大台に達する計算になります。もちろん、今後の株高はハイテク株が牽引するでしょう。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)の5月のファンドマネジャー調査でも、米国と中国の大手ハイテク株が引き続き買いを集めており、投資家がハイテク株を選好していることが鮮明になっています。2019年後半から2020年前半までの米国株の一段高を想定し、いま一度ハイテク株に注目しておきたいところです。

江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)