米国株をけん引してきたハイテク株の上昇に陰りが見られます。その背景には、「フェイスブック問題」があります。既報の通り、個人情報の不正流出が報じられ、情報流出発覚直前の3月15日から株価は最大で18.9%下落しました。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が米議会で証言する見通しとなり、情報管理のあり方などで追及を受けることになります。今回の問題にきわめて厳しい視線が向けられている理由は、利用者のデータという最大の価値が拡散されてしまうという点です。これは、個人情報を抱えるプラットフォーマーのデータ管理の根幹に関わる問題であり、企業としての信用に関わる問題です。個人情報が管理できないとなれば、ソーシャル・ネットワーキングサービス・システム(SNS)のビジネスモデルの根幹が崩れることになります。そのため、一部議員から「個人情報を大量に持つプラットフォーマーは規制すべき」との声も出ています。

今回の問題が大きくなっているのは、このデータが2016年の大統領選において、ロシアによる介入に使われた可能性がある点です。米議会は2017年11月にロシア疑惑に関する公聴会を開催し、ザッカーバーグCEOの出席を求めました。しかし、本人は応じませんでした。しかし、今回は影響を受けた利用者が5,000万人と膨大であることから、出席せざるを得なくなったとみられます。とはいえ、今回の問題はフェイスブックそのものではなく、データの利用者の問題であるということでしょう。フェイスブックユーザーは、データがフェイスブック以外にわたることも含めて同意していると認識されており、利用の仕方が問題であるとのロジックです。筆者もフェイスブックを利用していますが、これは利用者が使用目的をしっかりと持っていれば、問題にならないと考えています。利用者は早々の利便性を口授しているわけであり、これはまさにプラットフォームの提供者と利用者のトレードオフです。これを前提に考えないと、SNSビジネスは成り立ちません。

選挙絡みで考えれば、オバマ前大統領も2012年の選挙では、利用者の許可を得たうえでフェイスブックのデータを使用しています。また、トランプ大統領もツイッターで自身の意見を直接発信しています。いまや、この機能を無視して情報収集することが難しいくらいになりつつあります。しかし、疑念を持つ利用者は「自分のデータはどう使われるのか」という点にばかり目を向け、実際に利用を躊躇する人も少なくありません。しかし、今更この世界がなくなることはもはや不可能でしょう。米国は常に新しいイノベーションを提供し、世界の潮流を作り上げてきました。インターネットから現在のSNS、さらに人工知能や自動運転まで、あらゆる新しい技術のほとんどが米国の軍事技術からのおさがりです。この構造は今後も維持されるでしょう。大量の個人データを扱うグーグルやアマゾンなどのハイテク企業は、ビジネス拡大にとってきわめて重要な巨大なデータベースをすでに構築し、それを収益化することに成功しています。この構造を考慮すれば、今回の問題で企業へのデータの扱いに関する規制が強まり、成長の足かせになるようなことはないでしょう。言うまでもなく、これら企業が持つ高い技術やイノベーションの力は、これまでも、そしてこれからも米国経済の成長エンジンであり続けるでしょう。問題が沈静化すれば、ハイテク株への注目が再び高まるでしょう。第1四半期決算の発表がそのきっかけになると考えています。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)