トランプ政権の不安定が目立っています。市場はこれを嫌気し、株価動向もやや不安定になっています。辞任を発表したコーン国家経済会議(NEC)委員長の後任に保守派の経済評論家ラリー・クドロー氏を任命したことなどを受けて、政権の通商政策が一段と保護主義に傾くとの見方が強まっています。同氏は16年の大統領選でトランプ氏の顧問を務めたほか、税制改革の策定にも関わりました。また、「米国経済が打撃を受けるとは思わない」と輸入制限を擁護する姿勢を示しています。一方、国際協調を重視するティラーソン国務長官が解任され、保守強硬派のポンペオ中央情報局(CIA)長官が後任に指名されました。5月までに行う意向の米朝首脳会談に「最大限の圧力」を維持し、妥協しない姿勢を鮮明にしたといえます。ポンペオ氏は「外交解決が不可能な場合は、幅広い選択肢を提示する」とし、軍事的選択肢を排除しない考えを示すなど、政権内の対北朝鮮強硬派の一人とされており、トランプ大統領が離脱を警告するイラン核合意の行方にも影響を及ぼす可能性があります。

このように、トランプ政権の中枢メンバーが次々と辞任・解任となり、トランプ政権はますます先鋭化するとの懸念が市場に広まっています。また、トランプ大統領が「鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す」と表明しましたが、さらに中国に対して、対米貿易黒字を1,000億ドル削減するよう求めているとの報道もあります。ナバロ通商製造業政策局長は中国の知的財産権侵害について、「トランプ大統領に対抗策の提言が数週間内に行われる」との見方を示し、対抗策は「不公正な貿易慣行是正の一環」ともし、対中強硬姿勢を改めて示しています。中国の反発は必至で、報復の応酬となる「貿易戦争」に発展するとの懸念が高まっています。アルゼンチンで3月19日・20日に開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議を前に、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、米国の鉄鋼・アルミ輸入制限に対して「各国は保護主義措置を拡大させないようにすべきだ」と訴え、慎重な対応を要請しています。G20では米国の「保護主義」への傾斜に対してかなり活発な議論が交わされるでしょう。米国の対応に注目したいところです。

このような状況ですので、トランプ政権がかき回す形で世界経済の枠組みが崩壊し、堅調だった世界景気は後退に向かい、金融市場も不安定化するとの懸念が強まりそうです。しかし、政権の維持には、景気・経済が堅調に推移することが不可欠です。米国はこれまでも自由主義・資本主義の代表であり、これからもそうでしょう。そして、世界のマネーが集まってくる世界最大の市場であり続けるでしょう。それをあえて放棄するはずがありません。もっとも、少しでも米国に有利になるように誘導するのが、トランプ流であることだけは確かです。これからも政治面は不安定な状況が続くかもしれませんが、景気・経済を壊すような政策を取ることはあり得ないでしょう。市場がこの点に気づけば、金利も正しい形で上昇に向かい、株価も堅調な景気や企業業績を背景に再び上向くでしょう。就任以降のトランプ政権下での米国株は、きわめて順調に上昇しています。これは、トランプ政権の政策の成果でもあります。トランプ政権誕生後の株価動向は、共和党のパターンから放れ、通常は堅調に推移する民主党のパターンにきわめて似ています。トランプ政権の1期目は、政治の不安定さを抱えつつも、堅調な景気や企業業績が支える形で上昇トレンドが続くものと考えています。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)