米国株は依然として不安定な動きにあります。米長期金利の上昇への懸念に加え、3月1日にはトランプ大統領が「鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す」と表明したことが嫌気されました。一方、2月27日に米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル新議長が初めての議会証言で「経済の過熱の回避と物価インフレを持続可能なベースで2%に達成させることを今後も上手く両立させる」としました。また、「減税や世界的な景気回復が米経済の追い風となった」としました。さらに、「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を引き続き段階的に引き上げていくことが、目標達成に最善となる」とし、「長期金利の上昇や市場のボラティリティの高まりなどが経済活動、労働市場、インフレ見通しに重くのしかかっているとはみていない」としました。この議会証言の全般的なトーンは、これまでのFRBのスタンスを継続したものですが、市場ではややタカ派的と受け止められたようです。

NY連銀のダドリー総裁は、今年4回利上げすることについて、「わたしの意見では依然として緩やかな利上げにとどまっていると考えている」とし、税制改革法の成立で「米国経済は潜在成長率を上回るペースで拡大し、緩やかな金融引き締めを続ける必要があることに確信が強まった」としています。ただし、「物価上昇率が目標の2%を下回る状況では、積極的に利上げを行う理由を見つけるのは難しい」ともしています。やはり、インフレ指標が強まらないと、現在のFRBの想定である年内3回の利上げまでが限界となりそうです。一方で、市場では再びイールドカーブのフラット化が進んでいます。パウエルFRB議長の発言を受けて、今年の利上げ回数が従来予想から1回増え、年4回になる可能性が意識されています。パウエル議長は「現在のイールドカーブの状況が問題とは認識していない」としています。確かに2-10年債利回りスプレッドが0.60%前後で推移しているうちは、大きな問題ではないでしょう。いまは市場が長期金利の上昇に懸念しすぎているように思われます。長期金利が上昇し、短期金利の上昇ペースがそれにやや劣後すれば、イールドカーブがむしろ拡大し、株式市場にはダメージにならないでしょう。もっとも、金利が上がりすぎると、企業業績を圧迫する可能性が高まりますので、一定の注意は必要でしょう。市場では、3月のFOMCでの利上げを織り込んでいますが、年内に3回の利上げが実施される確率は25%超にとどまっています。今後はこれが高まるかに注目することになるでしょう。

市場は金利動向にかなり神経質になっていますが、金利上昇は好調な景気の証明でもあります。米国経済指標は、最近では住宅指標の落ち込みがやや懸念されましたが、センチメントは悪くないといえます。2月の消費者信頼感指数は130.80と、最近で最も高かった昨年11月の128.60を超え、2000年11月の132.60以来の高水準を付けています。また、2月のISM製造業景況感指数も市場予想の低下に反して60.8と、直近の最高水準だった昨年9月の60.2を上回り、04年5月の61.4以来の高水準を付けました。これらの指標は株価との連動性が高いことでも知られています。株価が好調に推移していたことが上昇につながった可能性はありますが、上昇基調が続いていることがむしろ重要なポイントといえるでしょう。いまは金利上昇に対して過度に警戒感を強めるよりも、堅調な企業業績と景気動向を重視したいところです。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)