先週のゴールド

 

金相場は下落しました。週初は横ばいでした。ドラギECB総裁による賃金上昇率やインフレに関する発言でユーロが押し上げられ、ドル指数が下落したことで一時的に上昇しましたが、その後ドルが値を戻したことで下げました。その後は小幅上昇しました。9月25・26日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控える中、ドルが下落したことが支援材料となりました。ただし、堅調な米国経済指標が引き続き米金利やドルを下支えしたことで、上げ幅は限定的でした。その後は下落に転じました。米連邦準備制度理事会(FRB)はFOMCで政策金利を引き上げました。利上げは予想通りだったことからドルが上げ幅を縮小したものの、上値の重い状況となりました。FRBは「緩和的」な金融政策の時代の終わりを告げる声明とともに、利上げを決定しました。また、今後数年間の金融政策見通しをおおむね据え置きました。その後も下落し、直近のレンジである1,190-1,210ドルを下に割り込みました。強い内容だった米国経済指標を受けて、ドルが上昇したことが売りにつながりました。8月の米耐久財受注の堅調さや、イタリアの政治的混乱によりユーロが下落したことでドルは一日の上昇率が1ヶ月超ぶりの大きさとなり、これが金売りにつながりました。週末は前日に約1ヶ月半ぶりの安値を付けていた反動から、安値拾いの買いやショートカバーが入り、反発しました。また、この日は週末・月末・四半期末が重なり、ポジション調整の買いも入りやすかったといえます。また、ドルが対ユーロで弱含んだことも買いを誘ったといえます。世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は9月29日時点で742.23トンと、前週末から変わらずでした。低水準を維持していますが、減少傾向はひとまず止まっており、投資家の売りが一巡した可能性があります。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは9月25日時点で17,648枚の売り越しとなり、前週からネットの売り越し幅が6,804枚増加しました。買いポジションが4,857枚減少し、売りポジションが1,947枚増加したことで、ネット売り越しがさらに拡大しました。週末にかけて下げており、売り越し幅がさらに拡大しているかを確認したいところです。円建て金相場は反落。ドル/円相場が円安方向となりましたが、ドル建て金相場の下落が押し下げにつながりました。

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今週のゴールド

 

金相場は下値を模索する展開が想定されます。直近のレンジの下限である1,190ドルを割り込んだことで、地合いは急速に悪化しました。FOMC当日の下げはそれほどでもありませんでしたが、その翌日に大きく下げており、市場参加者は米利上げを背景としたドル高を見て、あらためて売りを出したと思われます。反発過程で重要なポイントだった1,210ドルを何度か試しましたが、これを超えるような買いが入らず、投機筋の買い戻しが誘発されなかったことも、上値を抑えたといえます。基本的に、利上げはドルの上昇につながりやすく、ドルが上がると他通貨の保有者から見て金が割高になります。つまり、利子のつかない金は利上げに敏感に反応することになります。利上げは米国債利回りも押し上げるため、利子を生まない金の魅力が低下することになります。投資家はこのような見方を背景に、継続的に金保有高を減らしています。これらから、金は買い手が見当たらない状況にあります。また、先週はFRBは今年3回目となる利上げを決定し、2019年末までにあと4回、2020年にさらに1回の利上げ予想も示しましたが、これを受けてドル買い需要が強まる可能性は否定できません。市場がどの時点でこれらの見方を織り込むかがポイントになるでしょう。また、外部要因では、イタリアの財政不安からユーロが売られており、これも通貨の側面から金相場を押し下げる要因になりやすいといえます。一方、ファンダメンタルズも弱い状況にあります。インドや中国からの引き合いは明らかに低下しています。8月の中国による香港経由の金純輸入量は前月比29%減の31.857トンと、今年の最低水準でした。米国との貿易摩擦で、中国政府が銀行の輸入割当を厳しく設定したことが背景にあるようです。金価格は8月に1.9%下落しましたが、買いが膨らんでいないのは、通貨安を背景とした自国通貨ベースでの金相場の底堅さにあると考えられます。インドルピーも弱く、インドからの引き合いも細っているもようです。このように、現在は二大金消費国が金購入を手控えており、これがさらに価格を抑えているといえます。とはいえ、これから年末にかけて、インドでは婚礼シーズン、中国では国慶節などが控えており、さらにクリスマスに向けた需要が高まりやすい時期に入ります。したがって、年末に向けて金需要が高まるかに注目したいところです。ドル建て金相場は、8月16日につけた安値の1,173.5ドルを割り込まずに底値を固めることができれば、実需の回復から1,200ドルを超えて地合いが上向くものと考えます。円建て金相場は下げ渋る展開を想定します。ドル建て金相場は弱いものの、ドル/円相場が円安基調にあり、これが下値を支えるものと思われます。4,400円を割り込まずにこの水準を固めることができれば、再び上向く可能性が高まると考えます。まずはそのような動きになるかを確認したうえで、反発基調に入ったところで買いを検討したいところです。

 

プラチナ

 

プラチナは下落しました。金相場が軟調に推移したことにつられる形で下げました。世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドは対ドルで上昇基調を維持しましたが、ほとんど材料視されませんでした。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、9月25日時点で2,690枚の買い越しと、ネットで4,900枚の買いが入り、前週までのネット売り越しから買い越しに転換しました。買いポジションは2,920枚減少しましたが、売りポジションが7,820枚減少したことで、ネットポジションが買い越しに転換しました。プラチナ相場が底堅い推移となったことで、買い方が戻りを利用して手仕舞い売りを出す一方、売っていた向きも利益確定を急いで買い戻しを行ったことが、ポジションの転換につながりました。価格推移を見ると、これまでの下落一辺倒の動きから脱しており、投機筋の買い戻しがさらに増える可能性があります。その場合には、さらに水準を切り上げることが想定されます。節目の800ドルを維持できれば、再び上向くものと考えます。一方、実需への不安は残ります。先週も解説したように、ドイツでも旧式ディーゼル車から新車への買い替えを促すため、自動車メーカーの費用負担についてメーカー側と協議を行っていると報じられています。また、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、古いディーゼル車のハードウエア改良を援助し、旧車種と新車種との交換を促す奨励措置を導入する方針と報じられています。報道によると、VW社のディース最高経営責任者(CEO)はショイヤー運輸相との会談で、効率の良い排ガスフィルターの設置援助を支持すると約束したといいます。一方、VW社は自動車メーカーに古いディーゼル車の買い戻しを義務付ける提案は拒否したもようです。同運輸相は、ハードウエアの改良に公的資金を投じる可能性を否定しています。VW社は3年前の排ガス不正問題以来、政治的な圧力が強まっています。VW社は従来の立場を一転して政治的な要請に従い、旧車種のハードウエア改良に合意したことになります。ドイツ各都市はEUの大気汚染規則を軽視しているとして環境団体から訴訟を起こされており、複数の裁判所が古いディーゼル車の使用禁止を提案しています。このように、ドイツを中心に欧州でのディーゼル車への圧力は強まるばかりです。プラチナ需要が低迷する可能性がますます高まっており、今後の動向と市場の反応には注意が必要です。円建てプラチナ相場は下落しました。週初は上昇しましたが、ドル建てプラチナ相場の下落で下げに転じました。結果的に7月高値を超えられずに下げており、まずは下値確認が必要と考えます。3,100円前後で下げ止まれば、ドル建てプラチナ相場の反発や円安傾向をきっかけに反発する可能性があると考えます。まずは3,100円前後での下げ止まりを確認したうえで、買いを検討したいところです。

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シルバー

シルバーは反発しました。金相場は下落しましたが、買い戻しを背景に上昇しました。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場での大口投機筋のポジションは、9月25日で23,255枚の売り越しとなり、前週からネットの売り越し幅が2,261枚縮小しました。買いポジションが826枚減少しましたが、売りポジションが3,087枚減少したことで、ネット売り越し幅が縮小しました。14ドル割れを回避する形で下げ渋る中、投機筋が徐々に買い戻しを入れており、下値がしっかりしてきました。先週の金相場はむしろ下落しており、反発は投機筋の買い戻しが背景である可能性がきわめて高いといえます。先物市場を主戦場とする、現物を保有しない投機筋は、相場の反発にはきわめて弱く、買い戻しを余儀なくされます。この流れが続き、相場の節目となっている14.80ドルを明確に上抜くと、さらに買い戻しが誘発され、一段高となる可能性は十分にあると考えます。テクニカル的にも上昇余地があるため、金相場の下値が安定してくれば、上昇に転じる場面が見られるでしょう。依然として銀市場独自の材料は見出せません。しかし、これまで一方的に下げてきただけに、底値の堅さを背景に値戻りを利用した買いを入れることで収益を狙う投機筋の買いが、さらに相場を押し上げる可能性は十分にあるでしょう。14.80ドルを超えると節目の15ドル、さらに15.50ドルまでの上昇も視野に入るだけに、今後の動向に注目しておきたいところです。円建て銀相場も上昇しました。ドル建て銀相場の上昇に加え、円安基調も押し上げにつながりました。54円を超える中、これをサポートする形で推移しており、上昇への期待が高まります。まずは54円を固める一方、節目の55円を超えるようだと上昇に勢いがつきそうです。そのような動きになるのを確認したうえで、買いを検討したいところです。

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